それぞれの休息

 ラックの街で催し物を観に広場まで行ったギン達であったが、その場は翌日のミックサック団の公演の準備をしており、今日は開かれないと分かり、ルルーが一同に言葉を発していた。


「じゃあ、みんな、今日は夜まで自由に過ごしましょう。ムルカ様と私はとりあえず宿を確保してくるから」


 ルルーの言葉を聞き、ウィルが最初に反応を一同に示す。


「俺は少し、船に使えそうな資材がないかを見てみるよ。まだ旅は続きそうで補修も必要そうだし、本当はアイルで見たかったけど、色々あったしな」


 ウィルは船の資材の調達に行くことを告げるとミニルがウィルに言葉を告げる。


「兄さん、それ私も行くわ」

「お前に船の事が分かるのか?」

「私だって、海の男の娘よ。少しくらいなら、それに兄さん1人で行かせると無駄遣いしかねないわ」

「へいへい」


 ウィルとミニルがやりとりをしていると、ブライアンがウィルに声をかける。


「なあ、ウィル。俺もその船の資材ってやつを一緒に見に行っていいか?」

「俺は構わねえけど、っていうかブライアン、お前が船に興味を示すなんて珍しいな」

「言わなかったか?俺は漁師になりてえんだ」

「そうだったのか、じゃあ今度操船を教えてやるよ。言っておくが俺の教えは厳しいから覚悟しとけよ」


 ブライアンを少し脅かすような言い回しをするウィルに対しミニルがたしなめる。


「兄さん、調子に乗らないの」


 ウィル達のやり取りにジエイも口を出す。


「ウィル殿、私もそれに同行してもよろしいですか?」

「ジエイ、お前もか?まさかお前まで漁師になりたいっていうのか?」

「我が祖国スールは造船や操船技術はさほど発達しておらず、資材から参考にさせて頂きたいと思いまして」

「お前ら、揃って真面目だなあ」


 ウィルがぼやくとミニルがつっこみを入れる。


「兄さんが不真面目なのよ。さ、そろそろ行きましょう」


 そう言ってウィル達は資材調達に向かう。


 ウィル達が資材調達に向かうとヨナが残った面々に自身の行動を告げる。


「あたしらは、なんか商品を仕入れてあとでアイルでまた行商ができるようにしておくよ。じゃあ行ってくる」


 そう言ってヨナ達は部下を引き連れて商品を探しに向かう。


 ヨナが去ると、ルルーもギン達に宿を確保することを告げる。


「それじゃあ、私達も行くわ」

「参ろう」


 そう言ってルルーとムルカも広場をあとにする。


 残されたギンとエイムであったが、とりあえずエイムから声をかける。


「あの、ギンさんはどうしますか?」

「とりあえず俺達もここを離れよう。俺達がいると準備の邪魔になる」

「はい」


 それぞれがつかの間の休息を楽しむ中、危機は刻一刻と迫っている。

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