出港!小島への航行

 フィファーナ隊本隊がプレツに上陸している頃、ギン達も港町ニリから補給拠点のある小島に向けて出港しようとしていた。


「それじゃ、坊ちゃん、お嬢、気を付けてください」

「おう、任せておけ」

「私が兄さんをしっかりフォローするから」


 リンドの見送りの言葉にウィルとミニルは応え、ギンからも船上で声をかけられる。


「それじゃあウィル、操舵と安全な航行ルートの選択は任せるぞ」

「じゃあ、早速いくぜ」


 そう言ってウィルは突如目を閉じ初め黙り込む。


「ウィル?どうした?」

「あれは精神集中で心の声を精霊に届けているんです」

「そうなのか」


 しばらくするとウィルは目を開き、船の操舵を始める。


「それじゃあいくぜ」


 ウィルがそう言いながら船を操舵し、補給拠点のある小島まで向かおうとしている。


 船が進行してしばらくすると今度はミニルが先程のウィル同様、精神集中を始める。


「ミニル殿は風の精霊の声が聞こえるそうですが一体どういったことを?」


 しばらくするとミニルは目を開き、自分が聞いたことをウィルに告げる。


「兄さん、天候が変化する心配はないからこのまま進みましょう」

「おう」


 天候という言葉が聞こえたためジエイは気になり、ミニルに尋ねた。


「ミニル殿、風の精霊は天候を教えてくれるのですか?」

「はい、といっても現在の風の動きを元に数刻以内の天候のみではありますが、これを数刻以内に行えば私には今日1日の天候が分かります」


 ミニルに説明を聞いてギンは前にミニルから聞いていた話を思い出す。


「そういえば観光案内の仕事をしていたといったな。その能力は確かにその仕事にうってつけだな」

「はい、急な天候の変化も分かるので予定が柔軟に組めるんです」


 ミニルの話を聞いてジエイが2人に尋ねる。


「風水使いはその精霊に応じた術が使えると聞いていますが、お2人もそうなのですか?」

「そうだな、俺は水を刃状に変えることができるな。親父から短剣の特訓をされたときに思いついた」

「私は風を自分の前で楯みたいにすることができます。お客さんを魔物や盗賊から守るために母より教えられました」


 2人の話を聞いて、ギンとジエイは話し始める。


「ギン殿、風水使いも帝国が狙う可能性があるかも知れませんな」

「ジエイ、最近思うんだが帝国は本当にそんな力のある者を集めているのか?」

「ギン殿?何か帝国の動きに疑問でも」

「これまでの奴らとの戦いからも奴らは俺達の能力は認識しているが、捕らえるという考えがあるように思えない」


 ギンの発言を受け、ジエイが尋ねてみる。


「確かにそうかもしれません、そうすると帝国の目的は?」

「世界中を帝国1強にする、それ以外考えられないな」

「強大な軍事力で特殊な力さえも押さえつけようというわけですか。ですが、その先に何を望むのでしょうか?」

「分からん、だが何であれ今は奴らと戦うしかない」


 帝国の目的が見えないが、島には着々と近づいている。

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