風水使いの宿命

 元海の傭兵であるボガードは自身の息子であるウィルをギン達の作戦に協力するよう促し、その話を聞き、ボガードの娘でウィルの妹でもあるミニルが自ら協力を願い出て、作戦に加わるというのだ。さすがにボガードも折れて、ミニルの作戦への参加を許可する。


「ったく、お前も頑固だから仕方ねえな。一体誰に似たんだか」

「父さんじゃない」

「はっはっはっ、それじゃ、しょうがねえか!」


 そう言ってボガードはギンの方を向き話す。


「おい、傭兵のあんちゃん。ミニルに何かあったら俺がてめえをぶっ殺してやるから覚悟しとけよ!」

「もちろんです。もっとも娘さんになにかある時は俺も既に死んでいるでしょうけどね」

「はっ!言いやがる。度胸だけは認めてやる」


 自分の名前が出てこないことに不安をおぼえたウィルが思わず声を出す。


「待てよ親父、俺はどうなってもいいのか?」

「お前は海の男だろ、海で死ぬのは本望じゃねえのか」

「そりゃねえぜ」


 ボガードに対し困った声を出したウィルに対しギンが声をかける。


「戦いは俺達がなんとかする、だからお前は精霊の声を聞いて安全な渡航を頼む」

「頼むぜほんと」


 話をしている内にレンがボガードやギン達に声をかける。


「お料理ができたので食べましょう。皆さんもどうぞ」


 レンに促され、ボガード、そしてギン達もテーブルに座りなおす。


 テーブルの上には港町らしく、海の幸をふんだんに使った料理がならんでおり、それぞれが食していく。


 食事中にレンが言葉を発する。


「そう、ウィルとミニルがこの人達と一緒に船に乗るのね、気を付けてね2人共」

「あの、奥様はご心配ではないんですか?」

「きっと私達のように精霊の声を聞くことができるものの宿命だと思うわ」

?奥様も精霊の声を聞くことができるんですか⁉」


 ルルーの反応にボガードが話を始める。


「そうだ、俺がある村で風水使いの娘が海賊にさらわれたから取り返して欲しいって依頼を受けた時にこいつを助けに向かったってわけよ」

「そうなの、その時に私を助ける為に戦う姿は勇ましく目を奪われたわ」

「俺もこいつに惚れちまって、報酬を蹴って、こいつと一緒になりたいってこいつの親父さんに願い出たからな」


 両親のなれそめ話に恥ずかしくなったのかウィルとミニルは声をあげる。


「おい!頼むから子供の前で惚気話なんてしないでくれよ」

「そうよ!聞いてるこっちが恥ずかしくなるわ」


 ボガード達のやりとりを聞いてギン達はあっけにとられ言葉がない。


「よし、食い終わったらウィルとミニルは出発の準備をしろ」


 いよいよスップに戻り作戦開始の時が迫る。

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