砦の窮地

 ギンがエイムをミッツ教団の教会まで休んでもらう為、付き添い終え、ギン自身は東の砦に救援に向かおうとしている頃、ブライアンとルルーは砦の近くに接近しつつあった。


「そろそろ前の感じだと砦が見えてくるころだな」

「そうね、あ、見えてきたわ」


 ルルーが砦の姿が見え始め、目を凝らして砦の方を見つめると驚く光景が見られた。


「何てことなの!砦が既に包囲されているわ!」

「前の時よりやべえんじゃねえのか?」


 ルルーとブライアンは前回の砦の救援の戦いより窮地に陥っていることを感じ、対策を練るために話し合いをすることとした。


「こうなりゃあ、前みたいにお前の防御魔法で強化して俺が突破口を開いてお前が砦の中に入って中の兵士たちを治癒するのがいいんじゃねえのか?」

「待って!あの魔法は持続時間が短いし、いくらあなたでもあれだけの数を抑えるのは無茶よ。せめてエイムかギンがいればその作戦も成立すると思うんだけど」


 ルルーは少数の自分達が大軍と正面から戦うにはエイムが使用する威力が高く使用範囲が広い魔法や、ギンの使用する強力な魔法剣である。ギンとブライアンの2人なら数を抑える可能性が増すとルルーは考えていたがそれは現時点ではかなわないことである。


「それじゃあお前はどうしたらいいと思っているんだ?」

「私はとりあえず牽制の意味で私が魔法を帝国軍に放つわ。そうすれば敵の注意がそれて砦への攻撃に専念できないはずよ。その間にムルカ様やヨナ達、ちょっと遅れるかもしれないけどギン達が来れば勝機はあるわ」


 ルルーはあくまで戦力が揃うまで無理な攻撃を控え、時間を稼ぐのが良いという考えではあるが、ブライアンが異論を唱える。


「ちょっと待ってくれ、確かお前、前に魔物と1人で戦っていた時に魔力が尽きてなかったか。あいつらはあの時の魔物より数が多いぞ。持つのか?」

「……持たないかも知れない。でも私とあなただけでは包囲は突破できないわ。2人とも無駄死によ」

「じゃあ、お前の魔力が尽きたらお前を守りながら戦うのかそれこそ無駄死にになるかも知れねえじゃねえか」

「ううん、その場合はあなたは万が一に備えてスップに戻って。帝国軍がなだれ込むかも知れないから」


 ルルーの思わぬ提案にブライアンは疑問、そして怒りの感情が湧き、ルルーに対し激昂する。


「お前何言ってんだ⁉お前を見捨てて逃げろって事か⁉」

「最悪の場合って事よ、その作戦に失敗すれば砦を守り切るのは無理だから」

「だからって何でお前がそんな事しなくちゃいけねえんだ⁉」

「今、あの砦で兵士と共に戦っているのは私の同胞よ彼らを救えなくて私が逃げられるわけないじゃない!でもあなたはミッツ教団じゃないしそんなことさせられないわ!」


 ルルーは神官戦士が砦で戦っていることで彼らを救う意味もあり砦への救援に来たのである。その彼らを救えず自身だけが逃げることは許されないという思いをブライアンに話すが、ブライアンもまた自身の思いを告げる。


「ルルー、お前さっき自分が言った事と俺が言った事をもう忘れたのか?」

「何よ?いきなり」

「俺達は不思議な関係だってことだよ。互いの話をしない割には何故か信頼しているって話だ。そして俺はそれは理屈じゃねえって言っただろ」

「え?でもあなたは……」


 ルルーは何かを言おうとしたがそれにかぶせるようにブライアンが言葉を放つ。


「ミッツ教団かどうかなんて関係ねえ、お前の同胞を助けたいって言うんなら俺にも手伝わせろ。今更それはいいっこなしだろ」

「ブライアン……、全くあなたの場合は理屈じゃないって言うよりただの考えなしじゃない」

「何⁉」

「でもありがとう。あなたを、ギン達が早く来ることを信じてあなたが最初に言った案でいきましょう」


 ブライアンの心意気を信じ、ブライアンの作戦でいくことに決めたルルー。帝国軍を止められるか?

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