魔導騎士団、その力

 ブロッス帝国が誇る精鋭部隊、魔導騎士団がグラッス国内の砦を攻めているという情報を得たギン達はその砦の方向に馬車を走らせていた。


 ギンが馬車を走らせている中、馬車内ではジエイが一同に説明をしていた。


「私が得た情報によると3日前にはこのトッポックス領に侵攻しておりその3日間で5つの砦を落としている模様」


 ブライアンがジエイからの情報に驚き尋ねている。


「3日で5つの砦をか?でも待てよ魔導騎士団ってことはそいつらも魔法を使っているってことか?」

「はい、ですが本職の魔術師ほどの魔力は持ち合わせていないので魔法の使いどころは慎重で、彼らの剣技や指揮官の戦術眼が優れている他ありません」


 ジエイの話を聞き、ムルカが指揮官について言及をした。


「その指揮官というのは魔導騎士団団長カイスだったな。まだ若いが、帝国が誇る精鋭部隊の指揮を任されるほどの者か。やはり骨が折れそうだな」


 馬車内で一同が話しているとギンが馬車を止め、馬車を止めるギンにエイムが尋ねる。


「ギンさん、どうしたんですか?」

「どうやら、その魔導騎士団とやらが近づいているようだ」


 ギン達が魔導騎士団に気付き、馬車を止めると魔導騎士団もまた移動中の馬車を不審に思い、動きを止めた。


「プラナ、あの馬車か?」

「斥候によればそのはずです」

「だが、行商人かも知れぬ。私が話してみよう」

「カイス様、今は疑わしいものは即始末すべきかと思います」


 プラナは敵の可能性のある者は排除すべきとカイスに進言するが、カイスは全く違う意見を述べる。


「プラナよ、敵でないものを討つことは陛下の意志に反する行為だ。それに敵意を向けてくれば即切り捨てるつもりだ」


 カイスはあくまでも敵対行為をするものを斬るという思想であり、それは皇帝であるギガスの意志でもあるようだ。


 そう言ってカイスは護衛を数名連れギン達の馬車に接近する。


「いきなりで申し訳ないが少し話がしたい。良いか?」


 突如敵であるはずのカイスに声を掛けられ戸惑うギンだが、敵意を感じなかった為、とりあえず話を聞く。


「良いが、何だ?」

「私はブロッス帝国魔導騎士団長のカイスという者だ。作戦の詳細は話せないが、現在作戦行動中だ。巻き込まれたくなければ速やかにこの場を離れることを推奨する」


 思わぬカイスの提案にギンは戸惑うが、ブライアンが小声でルルーに話しかける。


「まさか、あいつ俺達のことは見逃す気か」

「でも私達が逃げたらこの地方の人を見捨てることになるわ」


 ブライアン達が小声で話している様子を見てギンがカイスに言葉を返す。


「心遣い感謝する。だが俺達にも引けない事情があるんでな」


 そう言ってギンがカイスに剣を向けるがカイスも殺気を感じて回避する。


 心配になったプラナがカイスに駆け寄った。


「カイス様、ご無事ですか?」

「心配はいらん、だがあの男かなりの腕前と見た」


 ギン達と魔導騎士団との戦闘が始まろうとしている。

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