阻みし者

 グラッス国内を馬車で移動しているさなか、ギン達は謎の女性とその女性が率いている集団と対峙し、女性からブロッス帝国軍と思われ困惑している。そんな中、女性が再度言葉を発する。


「もう1度言うよ。あんたらブロッス帝国のもんだろ?」


 女性の発言にギンが言葉を返す。


「俺達は帝国軍などではない。そもそも何故帝国軍だと思ったんだ?」

「帝国軍がこのグラッスに侵攻しているっていう情報を得てさ、あたしらは領主様に言われてこの辺を見張っているのさ」

「じゃあお前たちはこの地域の領主の軍なんだな」

「あたしらは傭兵みたいなもんさ、大体あんたらこそ帝国軍じゃないってんならなんで武装してんのさ?」


 ギンが女性と話している中、ルルーが会話に入る。


「ギン、私に任せて」


 そう言ってルルーが女性に話す。


「お待ちになって下さい。わたくしはプレツより参った、ミッツ教徒のルルーと申します。どうにかあなた方の領主様にお話を通してはもらえないでしょうか」


 ルルーの発言を聞いた女性がおかしかったのか笑い出す。


「ハッハッハッ!ミッツ教徒⁉そんな気取った奴がこんな所にくるわけないじゃん。どうせウソをつくならもっとましなウソをつきなよ」

「き、気取った……、あのね私達はプレツより正式に派遣された特使でもあるの。せめてここの領主様にまずお話を通してほしいの。お願い」

「やだね、あんたらはどうも信用できないから」


 ルルーが女性との交渉が難航している中、ブライアンがぼやいてしまう。


「ちきしょう、なんでジエイはこいつらの情報を俺達に教えずに先に行くんだ」

「おそらくジエイ殿はこの者達に気付かれずに先に進めたのであろう。ジエイ殿の密偵としての優秀さが我らにとって裏目に出てしまうとは」


 ブライアンとムルカがジエイの密偵としての優秀さ、そしてそれ故今ギン達は窮地に陥っていることを認識した中、ギンが女性に尋ねる。


「なら聞こう、どうすれば俺達が帝国軍でないと信じてもらえる?」

「通行料」

「何?」

「通行料を払えっていってんのさ。もし帝国軍じゃないってんなら力づくで突破するようなまねはしないだろ」


 ギンは少し女性を待たせルルー、ムルカに相談を持ち掛けた。


「ムルカ殿、ルルー、どうする?特使である2人の意見が聞きたい」

「無用な争いは我らは望まん。致し方あるまい」

「ですがムルカ様、私達はすでに入国の際に通行料を支払っています。領主の私兵による二重搾取に屈してよろしいのでしょうか」


 3人の話し合いにブライアンが加わり自らの意見を述べる。


「俺も今回ばかりはルルーに賛成だ。あいつら俺達に因縁をつけて金を巻き上げるのが目的だろうぜ。そんな奴には払う必要はねえ」

「だがブライアン殿、我らの目的は同盟締結だ。地方領主の私兵とは言え諍いを起こせば同盟交渉は難航してしまう」


 ギン達の話し合いが長引き、女性は思わず声を出す。


「ああ、もういつまでうだうだしてんだ。払うのか、払わないのか?」


 女性がギン達に声をあげていると1人の男が女性に声を掛ける。


「大変です。ヨナの姉御」


 女性の名はヨナと言い、そのヨナに男は重大なことを伝えた。


「帝国軍がどうも近くまで来てるらしいですぜ、どうしやす?」

「なんだって!まさか来るなんて」


 ヨナの言葉をルルーが聞き、問い詰める。


「今、って言った。どういうことなの?」

「あ、いや、それは……」


 ヨナを問い詰めるルルーにギンが声をかけた。


「こいつらを問い詰めるのは後だ。まずは帝国軍を追い払うぞ」

「ギン殿の言う通りだ。行くぞルルー」

「はい。いい、あなた達後でどういうことか聞かせてもらうわよ」


 ルルーがそう言うとギン達は帝国軍が現れた場所へと向かう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る