フィファーナの魔法

 臨戦態勢を強めたフィファーナは扇を再び振ろうとする動きを見せる。そんな中ギンが前面へと立つ。


「待て、俺が相手だ」


 そう言ってギンも剣を抜いて臨戦態勢に入る。


「接近戦ならわらわに勝てると、じゃがそうはいかんぞ」


 ギンとフィファーナが剣と扇でつば競り合いをする。本来剣でなら扇を切り裂けそうなものだがフィファーナの扇が切り裂ける様子が見られない。フィファーナの扇は鉄製であり刃の部分もあり、フィファーナにとっては魔法を発動しやすく接近戦の武器としても扱いやすいのだ。


 扇でギンと互角のつば競り合いをしているフィファーナの扇さばきを目の当たりにしてブライアンが言葉を発する。


「なんて女だ、接近戦でギンと互角にやりあうなんて」


 ブライアンの言葉を聞いたエイムが身を乗り出す。


「ギンさんを助けないと。地を……」


 ギンを助けるために呪文の詠唱を始めようとしたエイムの前に突如ブライアンが飛び出す。


「危ねえ!エイム!」


 そう言ってブライアンはエイムの前に飛び出して盾でエイムに向けて放たれた短剣を防ぐ。


「あ、ありがとうございます、ブライアンさん」

「礼なら後にしてくれ。こいつらを蹴散らさねえとギンの所に行けねえ」


 そう言ってブライアン達の周りにフィファーナが率いている兵が現れる。その様子を確認したルルーがムルカに呼びかける。


「ムルカ様!」

「うむ、我々の動きを抑えてギン殿とジエイ殿を始末するつもりのようだ」


 状況を察知したムルカがブライアンに指示を出す。


「ブライアン殿!ルルーとエイム殿を貴殿が守りながらこの者達を抑えてくれ」

「旦那はどうするんだ?」

「私は隙を見てギン殿達を救いに向かう」


 ムルカがブライアンに呼びかけるが、中々隙もできそうにない。


 そんな中ギンとフィファーナは一進一退の攻防が続くが互いに決定打が与えられない。一瞬の間を測り、フィファーナが後退する。


「ふっ、先程の神官戦士がおもしろいことを言うとったのう」

「魔法はイメージが大事。ということだったな、それがどうした?」

「そちを切り刻む様子を想像したらどうなると思う?」


 ギンはフィファーナの扇の刃の部分、そして風魔法の使い手ということからある事実を導き出した。それは風を刃上にすることであった。ギンにとって防ぐ術は剣で受けるもしくは回避することだ。


 強力な魔力を持つフィファーナの風の刃を剣で受け止め切るのは難しい、かといって回避することは後方の仲間たちが切り刻まれることを意味する。ギンにとっては残酷な2択が迫られる。


 そしてそんなギンを尻目に魔法が放たれようとしていた。


「死ね」


 魔法が放たれようとした瞬間にフィファーナの扇に短剣が放たれ、フィファーナはそれを扇ではじく。


「おのれジエイ、わらわの邪魔をするとは、そちから殺してやろうぞ」


 次の瞬間、ジエイは集中し手で何かを結ぶような動きをしている。一通りの動きが終わるとジエイの手から火が放たれる。


 フィファーナは魔法障壁で防ごうとするが防ぎきれず右手が燃え出す。


「ぐはあああーー、なんじゃあ、ええい!」


 自ら水の魔法で右手の火を沈める。数名の兵士がフィファーナのもとに駆け寄る。


「フィファーナ様!はっ、これは?お待ちを」


 そう言って1人の兵士が治癒魔法でフィファーナの火傷を治す。


「はあっ、はあっ、今のはなんじゃ?」


 魔法障壁を貫通したジエイの放った火、その秘密とは?

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