帰郷

 馬車での移動を続けるギン一行。途中他の町を経由し休むのを繰り返しながら数日掛けてようやくエイムの育った村へ辿り着こうとしている中、ルルーがエイムに声を掛ける。


「そう言えばエイムは自分もご両親も魔術師だって言ってたけど、他の村人もそうなの?」

「はい、皆さん魔法で薬草を調合したり、物作りをして生活をしています」


 魔法で生活をしているという言葉を聞いて、ブライアンが反応を示す。


「魔法の使えない俺には便利な生活に思えるな」

「でも私はそういった魔法を使えないので、ブライアンさんが思っているほど便利じゃないですよ。他の人だって使えない魔法に関しては自力でいろいろしなくちゃなりませんから」

「そうなのか、でもエイムは前に牢屋を熱で溶かしたことがあるじゃないか。あれだって生活の役に立つんじゃないか」

「あの時はギンさんが牢屋越しに指示をくれて出来たんです。それに私は魔力コントロールが上手くないから火の魔法は生活には使いにくいですね」


 エイムの発言を聞いて疑問に抱いたルルーがギンに尋ねる。


「ちょっと待って!ギン、あなた魔法剣だけでなく通信魔法まで使えるの⁉」


 ルルーの疑問にギンに代わってエイムが話す。


「違いますよルルーさん。ギンさんは壁をリズムに乗せて叩いてそれで指示をくれたんです」

「でもそれをあなたも分かったのよね」

「まあ、なんとなくですけど当たってたみたいで良かったです」


 エイムの発言を聞いてギンとエイムは以心伝心ができるんじゃないかとルルーは考えたが、下手なことを言うとまたギンに怒られるんじゃないかと思い、発言を躊躇する。そんな時ギンが全員に対して言葉を発する。


「おい、村が見えてきたがあれじゃないのか?」


 ギンの発言にエイムが反応を示す。


「そうです、あれが私の村です」


 村の近くで馬車を止め、一行は馬車を下車する。ギンが代表して御者に礼を述べる。


「御者殿。ここまでのご足労、感謝いたす」

「どういたしまして、それじゃあ私はこれで」


 そう言って御者は去っていき、ギン達はエイムの村へと入っていく。


 村の中を歩いていると一人の女性がエイムに声を掛ける。


「あ、エイムちゃん帰っていたのね。お帰りなさい、その人たちは?」

「ただいま戻りました。護衛の方と治癒魔法を使える聖職者様が着いてきてくれたんです」

「そうなの、早くお帰りなってあげなさい」


 そう言って女性は去っていき、ギン達は徒歩でエイムの家に着く。小さな家が目立つ村の中少し大きめの家に住んでいるようだ。


 エイムが先頭で自身の家に入り、続けてギン達が家に入っていき、エイムが家にいる女性に声を掛ける。


「お母さん、ただいま戻りました」


 エイムが声を掛けたのはエイムの母親で、エイムの母は返事を返す。


「エイム、帰っていたの。その方達は?」


 一同が自己紹介を行う。


「自分は傭兵のギンと申します、娘さんの依頼で護衛を務めてます」


「あ、俺はブライアンって言います」


「お初お目にかかります。わたくしはミッツ教シスターのルルーと申します。エイムさんのお願いでお父様の治療に参上致しました」


 エイムの母は、ルルーの発言が信じられず聞き返す。


「ほ、本当にプレツから来てくださったんですか?」

「はい、お父様の症状をご確認したいのでお部屋までご案内お願いします」

「あ、はいどうぞこちらへ」


 そう言ってエイムの母はエイムの父の自室へと案内する。


「こちらです。開けますよ」


 その発言を聞いてルルーが返答をする。


「お願いします」


 エイムの母がドアを開けると、そこにはベッドで横たわるエイムの父がいた、その姿を見たエイムが父に駆け寄る。


「お父さん、今聖職者様がお父さんを治してくれます。ルルーさんお願いします」

「分かったわ」


 そう言ってルルーはエイムの父のそばに近づき、手をかざす。魔力の流れから病状を読み取っており、ルルーが使用する魔法が決まったようだ。突如ルルーが呪文の詠唱を始める。


「我を加護し神ミッツよ、わが信仰と力を糧に我の望みに応えよ。彼の者に巣くう魔を祓い給へ。治癒の光ヒーリングオーラ


 ルルーの手からまばゆい光がエイムの父に放たれた。


 みるみるうちにエイムの父の顔色が良くなっていき、体に活力が戻ったのか、起き上がるそぶりが見られる。


「う、ううん」


 父が起き上がる動きが見えたエイムと母が父に駆け寄っていく。


「お父さん!」

「あなた!」


 駆け寄ってくる2人に驚き、エイムの父が言葉を発する。


「エイム……帰っていたのか……この方たちは」


 エイムの父の病気が治り、ギンの依頼が達成された。この先一体どうなるのか?

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