冤罪

 ギン達が食事をしていると突如、ブライアンの名を知っている男たちが食事処に現れ、ブライアンも男の1人をカールと呼び、一触即発の様相になっていく。


「カール、お前いったい何故ここに?」

「それはこちらの台詞だ。寛大な隊長が処分を保留して下さったというのに、脱走して隊長の顔に泥を塗るとは兵士としての風上にも置けん奴。この場で斬っても良いのだが町中で血を流すわけにはいかんので、とりあえず我々と一緒に来てもらおうか」

「隊長には挨拶にいくつもりだったんだ。お前たちと俺はどうしたってそりが合わねえからお前たちとはもう会いたくなかったからこうさしてもらったんだ」


 隊長への挨拶は先程のギンの指摘で気付いてしようと思ったことで、思わずブライアンは後付けでさも最初から考えていたようにカール達に話した。


「黙れ!どのような理由があれ貴様は脱走兵とみなされたのだ!そのような輩、いくら隊長とてお許しにはならないだろう。もちろん俺も貴様を許しはしない!」

「許さないだと?お前達が俺の荷物に剣を紛れさせて、俺に冤罪をかけたんじゃねえか!それでよく許さないって言えたもんだな!」


 この発言を聞くも、カールは鼻でブライアンを笑った。


「ふっ、何を証拠にそのような戯言をほざくか。貴様の思い込みで我らを悪者扱いしないでもらおう」

「何だと!この…」


 ブライアンはカールの言葉に怒りを震わせるが、この場でカール達に手を挙げることは自らの立場を更に悪くしてしまい、彼らの思うつぼであることを理解しているため、必死でこらえている。ギンもまたブライアンの様子から怒りをこらえていることを察する。そんな時、一人の兵士がギン達の存在に気付き言葉を発する。


「カールさん、こいつらはどうします?ブライアンと一緒にいたようですが」

「そうか、こいつらがブライアンの脱走を手引きしたかもしれんな。そこの2人、貴様らも我々と来てもらおうか」


 突然の連行指示に戸惑うエイムがカール達に反論をする。


「待ってください!私達はさっき、ブライアンさんとお会いしたばかりなんで、そんなことできるわけありません。それにもう1度ブライアンさんのことをちゃんと調べてあげて下さい」


 エイムの反論に先程のようにカールは鼻で笑う。


「ふっ、ブライアンを擁護するのが貴様らがブライアンの仲間だという証であろう、それに貴様は見たところ魔術師のようだな。魔法を使えばブライアンを脱走させることなど容易であろう」

「待ってくださ……」


 再度反論をしようとするエイムをギンが制止する。


「ギンさん……なんで?」


 戸惑うエイムに小声でギンが説明をする。


「これ以上奴らとこの場でいさかいを起こすと、ブライアンも俺達も立場が悪くなってしまう。そうなっては君のお父さんを救えない」

「でも、このままじゃ…」

「とりあえず、俺達が正規の方法で入国したことが分かれば、奴らが言う脱走の手引きなどできるわけがないことが証明される」


 小声でエイムに話すギンを見て、不審に思った兵士が声を掛ける。


「そこ、何をこそこそとしている!」


 兵士の呼びかけに答えたギンが頼みごとをする。


「すまん、とりあえずあんた達の指示に従う。俺達を一度拘束するなら国境の入国記録を調べてくれ、俺達が正規に入国したことを証明できるはずだ」


 ギンの発言を聞いてカールは少し考えてから答える。


「いいだろう、だが証明できるまで貴様らは牢に入ってもらうぞ。それでいいな?」

「いいだろう」

「ふっ、話の分かる奴もいるものだな。ブライアン、とりあえずこの者たちとのつながりの有無を証明するまで貴様も牢に入ってもらうぞ」

「ちっ、仕方ねえ」


 若干、納得いかないもののカールの指示に従うブライアンであった。

 突如、身柄を拘束されることとなった3人はどうなってしまうのか?

 

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