書籍化やデビューがゴールではない

言ってしまえば当たり前のことなのですが、書籍化やプロデビュー、出版というのはひとつのステップに過ぎません。


「1巻出せて良かったー。これで満足。もう何も悔いはない」

……という考えであれば、そこがゴールでも構わないと思います。


しかし多くの作者は、売り出したからには人気作になって欲しいと願うでしょう。

シリーズが続き、あわよくばコミカライズやアニメ化を夢見ることでしょう。

それらの高い目標を見上げた時、『書籍化』や『デビュー』というハードルの、なんと低いことか。

あんなに苦労して登ったのに、まだ登山口に着いた段階でしかないのです。


頭では分かっていても、初デビューの時に私はそこで慢心していたのだと思います。

『打ち切り』という分かりやすい結果として表れました。


しかしなにも、それはラノベ出版に限った話ではありません。


高校受験や大学受験、志望校に入ることができても、ゴールしたわけではありません。

入社試験や就職面接に受かって採用されても、その後に何十年と続く会社員としての人生、その始まりに過ぎないのです。

テストの成績が悪ければ、留年や退学も有り得る。業績が悪ければいつ解雇クビになるか分からない。

ライトノベル作家には、特殊な技能や才能が必要と思われているかもしれません。

ですがやっていることは、世に住まう人々と大差ないのです。


既に多くの先人達がアドバイスされていることかとは思いますが、改めて私からも言わせて頂きたいです。

新人賞に受賞したり、Webから書籍化を果たしてデビューした皆様。あるいは私のように再デビューを果たした方。

嬉しいでしょう。幸せでしょう。心から、おめでとうございます。

しかし喜ぶのは、長くてもその日一日だけにしてください。


人生はフィクションのようにはいきません。

私だってそうです。10代で打ち切りという悲劇を経験し、冬の時代を経て、20代でリベンジできたのは感動的でしょう。

ですがそれでハッピーエンドではないのです。受賞した日にベストセラー作家になってヒロインと結ばれて、エンドロールが流れることはありません。

もしかしたら、また1巻で打ち切りになるかも。その可能性は常に存在しています。急に「やっぱ出版はナシで……」と言われるかもしれません。


挫折しても、人生は終わらない。

しかし同時に、成功しても、そのままハッピーエンドを迎えるわけではないのです。また新たな悲劇の入り口かもしれません。


それでも、進まないことには先の展開は分かりっこないです。

ですのでどうか油断することなく、気を引き締めて執筆活動を続け、プロとしての活動へと、踏み出して頂きたいと思います。


それが――立ち止まることなく、お先に歩を進める、私からのメッセージです。


全ては『途中』です。

作家になっても、何ひとつ『確約』などされていません。

ですが同時に、想像を超える反響や大ヒットという可能性も存在しているのです。

だからこそ我々は、このんでこの過酷な世界に足を踏み入れるのでしょう。


そしてどうか、その苦しくも素晴らしい『旅路そのもの』も楽しんで欲しいというのが、最後の持論となります。

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