8
その頃、体育館――
校舎から離れた場所にいた彼らは、何も知らず体育の授業に熱中していた。
しかし先程の、凄まじい化け物の雄叫びを耳にした事で、空気が変わり始める。
「何? 今の鳴き声……」
「凄くデカくなかったか?」
「それな、ビリビリーって……地震が起きたのかと思ったし……」
「その前の光も凄かったよな……アレなんだったんだ? 雷?」
「晴れてるのに雷が落ちる訳がないでしょ」
「じゃああの光は何だったんだよ!」
「分かんないわよ……」
離れた体育館にいたクラスメイト達も、少しずつ異変を感じ始めた様子。
キュウジも、胸騒ぎを覚えている。
「嫌な予感がするけど……気の所為、だよな?」
しかしその胸騒ぎを気の所為だと自分に言い聞かせている。
そして自分の中のモヤモヤを払拭させる為、別の事を考える事にした。
「シンの奴大丈夫かなぁ……?」
ここでハッとした。
シンが保健室に運ばれて、一番心配しているのは誰だ? 西野さんだろ? と。
一番不安になっているであろうマナカの様子を見る為、体育館内を見渡す。
だが……。
「あれ? 西野さん……どこ行ったんだ?」
体育館内のどこにも――マナカの姿はなかった。
「あ、ひょっとして、こっそり抜け出して保健室に行ったのか? ふぅん……あの優等生の西野さんがねぇ、これが愛の成し得る力なの――」
「ねぇ! あれ見て!!」
体育館にいる生徒の一人が校舎を指差し声を上げた。
「校舎の方から煙が上がってるよ!!」
その声に呼応するかのように、生徒達が窓付近へと集まる。
揃って、砂煙が上がっている校舎へ視線を送る。
その中で、とある生徒が気付く。
「なぁ……何か悲鳴が聞こえねぇ? ていうか、その……断末魔の叫び、みたいな?」
「断末魔の叫びって……縁起でもない事言うなよ」
「で、でもさ……本当に……」
ドゴォォォォン!! と爆音が鳴り響いた。
校舎から、ではない――
体育館の舞台付近がその音と共に崩壊した。
崩壊した体育館の瓦礫が、凄まじい砂煙を舞い上げる。
間近での建物の崩壊を目にした生徒達は、それによる風圧と驚きで皆尻もちをついた。
ただただ呆然と、突然無くなった体育館の舞台を見つめている。
「な、何だ?」
「ど、ドッキリ?」
「あはは……ば、爆弾でも爆弾したのかな?」
体育館にいた者……誰一人として、この状況に理解が追いついていない。
それもその筈だ。
体育の時間中に体育館が突然半壊するなど、誰も予想出来る訳がない。そして、予想外の出来事が起こった場合、人間はほぼ確実にパニックを起こす。
現実を理解する為に時間が必要となる。
「にやぁーーお」
そんなパニックを起こしている面々の目前から、不吉な鳴き声が聞こえた。
視界を遮る、幕のような砂煙向こう側から……不吉な……猫のような物が発する――鳴き声が。
そしてその鳴き声の主の影が――徐々に……彼ら彼女らに近付いていく。
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