第9話:魔王(本物)登場

■場所:祐子の学校の廊下■


祐子「(メデューサの騒ぎから5日、あれから魔王が現れたという情報はなかった。ミリューと佐和子は、立川駅北口で石化したメデューサを監視しながら野宿している)」


祐子「あー、今日も暑かったなー。練習もきつかったし、汗もかいたから、早くシャワー浴びたい」


(SE:シャワー室の扉を開く音)


(SE:シャワーの音)


祐子「ん? だれか先に入っている?」


ミリュー、佐和子「祐子、おつかれー」


祐子「ええっ!? なんで、二人が学校のシャワーを使ってるんですか?」


佐和子「え? 野宿生活が長くて、臭くなったから」


ミリュー「祐子に会うついでに、シャワーを使わせてもらっています」


祐子「学校関係者以外が使っちゃ駄目ですよ!」


佐和子「固いこと言うなし」


ミリュー「祐子もシャワー浴びるんでしょ?」


佐和子「さー、脱いで脱いで。裸の付き合いだし」


祐子「もう、しょうがないなー」


(SE:シャワーの音)


祐子「それで、私に何か用があるんじゃあ?」


ミリュー「そうでした! 実は、魔王が現れたんです!」


祐子「ええっ! どこに?」


佐和子「今度は高尾駅だし!」


祐子「だったら、のん気にシャワー浴びてる場合じゃあないでしょ!」


佐和子「そう言えばそうだね」


ミリュー「じゃあ、急いで行きましょう!」


祐子「ちょっと! みんな服着てから行こうよ!」




■場所:高尾駅北口■


(SE:電車の止まる音&電車の扉が開く音&駆ける足音)


祐子「高尾駅に着いたわ」


ミリュー「まずは変身よ!」


祐子、ミリュー、佐和子「“パトピラプンペフォポムール”!」


(SE:変身してるっぽいSE)


ミリュー「いた! あいつが魔王よ!」


魔王「おお、魔法少女ミリュー、久しぶりだな」


ミリュー「魔王! 覚悟しろ!」


祐子「え? ちょっと待って、あれ、天狗?」


ミリュー「テングってなんですか?」


祐子「日本に居た妖怪よ」


ミリュー「でも、あれは確かに魔王!」


祐子「いやいやいや。渋谷のクラブにいた般若のお面をつけたパリピ魔王みたいに、今回も天狗のお面をつけた偽物じゃあないの?」


魔王「馬鹿め」


ミリュー「危ない!」


(SE:突風)


祐子「きゃー!」


佐和子「あっ! 祐子がやられた!」


ミリュー「まずい! 一旦退却よ!」


(SE:駆ける足音)




■場所:高尾駅南口■


ミリュー「何とか逃げてきたわね。祐子は気絶しているだけのようね」


佐和子「祐子、重かったし」


祐子「うーん…」


ミリュー「気が付いた!」


佐和子「祐子、油断するなし」


祐子「痛たた…。まさか、魔王が天狗だとは…」


ミリュー「ということは、魔王はこちらの世界の来たことがあるのかしら?」


佐和子「本人に聞けばいいんじゃね?」


ミリュー「祐子、大丈夫なら、魔王を倒しに行くわよ」


祐子「わかった。もう大丈夫!」


ミリュー「よし! 行こう!」


(SE:駆ける足音)




■場所:高尾駅北口■


ミリュー「おい、魔王!」


魔王「なんだ、また来たのか?」


ミリュー「お前、こちらの世界に来たことがあるのか?」


魔王「あるぞ。数百年前のことだ、その時も大暴れしてやったわ。まあ、あの時は観光目的だったから、すぐ帰ったがな」


祐子「観光って…」


ミリュー「ともかく、今度は好きにさせないぞ!」


魔王「返り討ちにしてくれる!」


(SE:突風)


ミリュー「みんな、行くよ! 魔王の団扇から出る突風攻撃に気を付けて!」


祐子「わかった!」


ミリュー「炎の嵐!」


(SE:炎)


祐子「“エクスペクト・パトローナム”!」


(SE:氷)


佐和子「食らえ稲妻!」


(SE:稲妻の音)


魔王「ははは、当たらないぞ!」


佐和子「くそー、空を飛んでるから当たらないし」


祐子「ミリュー、そう言えば、魔王を倒す必殺魔法があるって言ってなかったけ?」


ミリュー「あっ、そうでした! 忘れてました!」


祐子「そんな肝心な事、忘れないでよ!」


佐和子「必殺魔法って何?」


ミリュー「魔王を倒すために編み出された強力な魔法です。私たち3人一緒でないと発動できないのです」


佐和子「どうやんの?」


ミリュー「3人の魔法のスティックの先端を合わせます」


佐和子「ほうほう」


ミリュー「そして、強く念じて巨大な火の玉を魔王にぶつけるんです」


佐和子「早速、やってみるし」


祐子「ですね!」


ミリュー「まず、スティックの先端を合わせて…、みんな、念じるのよ!」


佐和子「ねえ」


ミリュー「なんですか?」


佐和子「これ、なんか、呪文とか掛け声とか無いの?」


ミリュー「無いですよ」


佐和子「なんか、寂しいね」


祐子「いま、そんなこと言ってる場合ですか!」


ミリュー「もう、何でもいいんで、言っていいですよ!」


佐和子「りょうかーい。コホン、では…。エクスプロージョン!!」


(SE:すごい爆発音)


魔王「ぎゃー!!」


祐子、ミリュー、佐和子「きゃー!」


(しばらく静寂)


祐子「すごい爆発だったね」


ミリュー「私たちも爆風で飛ばされてしまいました」


佐和子「魔王は?」


ミリュー「あそこです!」


祐子「黒焦げで倒れてますね。死んだのかしら?」


ミリュー「これぐらいでは魔王は死にません。気絶しているだけですよ」


祐子「このあと、どうするの?」


佐和子「ガムテープでぐるぐる巻きにすればいいんじゃね?」


ミリュー「そうですね」


佐和子「ちょうど、駅のホームに天狗の石像があるから、そこに一緒にガムテで巻いちゃおう」


祐子「魔王と魔界四天王たちは、これからどうなるの?」


ミリュー「そのうち、私の世界から私を助けるために救助が来るでしょう。その時に全員引き渡します」


祐子「それ、いつくるの?」


ミリュー「わかりません。それまでは野宿生活です」


祐子「そうなんだ…」


ミリュー「救助が来るまでは、魔王が逃げないようにここで監視しながら野宿します。今日のところはこれで解散ですね」


佐和子「ところで、さっきの必殺魔法の掛け声なんだけど」


祐子「はい?」


佐和子「“バルス”のほうが良かったかなー?」


祐子「どうでもいいです」

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