九話
「そう言えば、まだちゃんと自己紹介をしていませんでしたね? 俺は松永ライゴウ。陰陽師をしています」
本当は前世のアニメの知識でここにいる全員の名前を知っているライゴウだったが、これからの会話で不都合な点を出さないために自己紹介を始めた。
「言われてみれば確かにお互い名乗っていなかったな。御剣ナツミだ。あの白い機体……ドラグーンの開発に携わっていた地球軍の技術士官で階級は大尉だ。それでコイツは弟のトウマだ」
「御剣トウマです。色々あってドラグーンに乗っています」
「アレックス・スペンサーだ。地球軍の軍人で階級は中尉だ。これからどれくらいの間になるかは分からんが、よろしく頼むぜ」
ライゴウが自己紹介をするとまずナツミが弟を連れて名乗り、続いてトウマが頭を下げて、アレックスが軽く手を上げて名乗る。
「善田友成です。これからお世話になります」
「……ダニエル・アードラーだ」
ナツミ達三人の後に友成が頭を下げて、ダニエルが顔を背けながら名乗って、その後二人の十代の女性が名乗り始める。
「晴山双葉です。これからよろしくお願いします。それとさっきは助けてくれてありがとうございました」
「レイラ・マルチラブよ。とりあえずは貴方について行くけど、本当に大丈夫なんだよね?」
(双葉とレイラか……。今のところは大丈夫なのかな?)
ライゴウは今自己紹介した二人の女性、双葉とレイラの顔を見て内心で呟く。
アニメの双葉はトウマと友成二人の幼馴染で二人共密かに彼女に好意を寄せており、レイラはダニエルと交際関係を持っていた。しかしトウマがドラグーンに乗って戦っている姿を見ているうちに双葉とレイラは彼に惹かれるようになり、それによって彼女達二人はトウマを巡ってぶつかり合い、同時に友成とダニエルもトウマに対する態度が変化するという展開となるのだった。
しかし今のところ双葉はトウマをただの幼馴染にしか見ていないようだし、レイラもトウマに対してそこまで興味を持っていないようである。
どうかこのままトウマ達が泥沼のような関係にならないようにとライゴウが願っていると、次は作業服を着ている三人の男女が自己紹介をしてきた。
「俺はハンス・ゼンスターだ。そこにあるドラグーンやソルジャーの整備班長をやっている」
「僕はレナード・富士。ハンス班長の部下で整備士をしています」
「キャサリン・アンバーです。私もドラグーンとソルジャーの整備士をやっています」
これで最初の百機鵺光で転移してきた十人の自己紹介が終わり、それを見たワールが自己紹介をするべく口を開く。
「ワール・ローズよ。ここにいる妹二人と一緒に傭兵をやっているわ」
「ルル・ローズ。隣にいるリルとは双子の姉妹よ」
「はい、リル・ローズです。それでもう戦うつもりはないから、この手錠を外してくれない?」
『『……………』』
ワールの後で彼女の妹達も自己紹介をして、リルが自分の両手にかかっている手錠を見せながら言うと、この場にいる全員が何とも言えない表情となりナツミが首を横に振った。
「悪いがそれはできん。私達はまだお前達を信じた訳じゃないからな。……しかしこのままでは彼女達のソルジャーは動かせんな。どうする? ここに置いていくのか?」
ナツミはリルに答えてからライゴウに聞くと、彼は首を横に振って答える。
「いいえ。できたら全てのロボットを運びたいと思います。それでワールさん達のロボットは……『彼』が合流してくれたら何とか運べると思います」
「彼?」
「はい。俺と同じ陰陽師で、任務でこの近くの村に来ていて、俺はこの辺りで合流する予定だったんです」
「ああ、そう言えば確かすぐ近くに村らしきものがあった気がするな」
ライゴウがナツミの言葉に答えると、リルとの戦闘中にソルジャーで空を飛んでいたアレックスが、その時に見た地上の様子を思い出しながら呟いた。
「ライゴウさんと同じ陰陽師……。一体どんな人なんですか?」
トウマがここで合流する予定の陰陽師について聞くと、ライゴウはどこか自慢するような口調で答える。
「とても優秀な陰陽師で、だけど偉ぶったりせず誰にでも優しく、他人を安心させるために常に丁寧な口調の、俺の自慢の友人だよ」
(こんな見るからに怪しい男の友人がそんな爽やかそうな奴だなんて、とてもじゃないけど信じられな……………!?)
自分の友人である陰陽師について話すライゴウの言葉に、ワールが心の中で呟いたその時、遠くから爆音が聞こえてきた。
「今の音は? ちょっと見てきます」
「あっ、おい! ちょっと待てよ」
突然聞こえてきた爆音を聞いて、ライゴウとアレックスが音が聞こえてきた方へと向かって走りだす。そしてしばらく走った後、森の先に小さな村の姿が見えた。
村の中央には三つの巨大な人らしき影があり、ライゴウはその中の一つを見ると驚きで目を見開いた。
「……!? あれは……!」
「何だ? あれが一体どうかしたのか?」
「あれは……さっき言った俺の友人である陰陽師の式機神です」
ライゴウの呟きを聞いたアレックスが聞くと、ライゴウは村の中央にある巨大な人らしき影の一つ、陰陽師が操る式機神を見ながら答えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます