第5話 凄い勢いで再婚決定!

 それから少しして、お父さんと洋子さんが戻ってくる。話してみてどうだった、なんて聞かれたけど、どうって言われても上手く言葉になんてできないよ。

 ただ、わたしも佐野くんも、再婚には賛成だって事だけは、ハッキリと伝えた。


「ほ、本当にいいのかい? お父さん達に気を使って無理してないかい?」


 お父さんは、喜び半分、驚き半分と言った感じで聞いてくる。

 もちろん、心配なんて挙げればきりがないだろうけど、それでも私の答えは決まっていた。


「うん。話してみて、何とかやってみようかなって気にはなれたから、それなら大丈夫かなって思う」


 そして佐野くんも──


「いきなり家族になるって言うのは難しいかもしれません。でも、そうなれるよう頑張っていきたいです」


 こんなすぐに答えを出すなんて、もしかしたら急すぎるかもしれない。だけど、今さらこれを取り消そうとは思わない。


 そう思っていたら、その直後、目の前でもっとずっと急すぎる事態が起こった。


「やったよ洋子さん。二人とも、僕達の結婚を許してくれるって!」

「ほんとね。じゃあ早速いつから住むか決めないと。今住んでるアパートの契約を確認して、引っ越し業者を当たってみて……籍はいつ入れようかしら」


 えっ!?


 ちょっと待って。お父さんも洋子さんも、まさかこの流れで今すぐ結婚なんて考えてないよね。そりゃ二人の再婚を認めはしたけどさ、いざ一緒にすむまでには、何度も顔合わせを繰り返したりとか、もう少し段階を踏むもんじゃないの?


 だけど信じられないことに、どうやらその予想は当たっているみたいだ。


「ありがとう。二人にそう言ってもらえて、本当に嬉しい。これからは、家族四人仲良くやっていこうね」


 涙ながらに言うお父さんを見て、いよいよ本気なんだと確信する。普段真面目な人ほどいざと言う時は羽目を外すって言うけど、今まで見たことないお父さんの一面に唖然とするしかなかった。


「悠里、久美ちゃん。ありがとね」


 喜んでいるのは洋子さんも同じだ。それを見て、隣にいた佐野君が、唖然としながらポツリと呟く。


「いくらなんでも急すぎない?」


 どうやら佐野君も、ここまで急な展開は予想していなかったみたい。そりゃそうだ。


「佐野君、再婚には賛成って言ってたけど、二人がこんなにすぐにやるつもりだったって、知ってた?」

「知ってるわけないだろ。どうして二人が仲良くなったか、なんとなく分かったような気がするよ」


 これまで、住む世界が全然違うと思っていた佐野君。だけど多分、今私達の気持ちは一緒だろう。


「じゃあ、反対する?」

「いや、それも……どうだろう。今さら言える気がしない」


 だろうね。大喜びしている二人を見てると、とてもストップをかけるなんてできなかった。


「えっと……こんな形で再婚が決まるとは思わなかったけど、これからよろしくお願いします」


 観念したように言った佐野君の言葉が、最後の決め手となった。


「こ、こちらこそよろしくお願いします」


 わたしも覚悟を決めて返事をすると、佐野君は表情を和らげ、ニコリと笑う。その様子が可愛くて、思わず胸の奥がドキッとした。イケメン、恐るべし。


(これからわたし、この佐野君とひとつ屋根の下で暮らすことになるんだよね)


 今さらながら我が身に起きた異常事態に戦慄するけど、どうにかうまくやっていけるといいな。


 この時は、そんな風に考えていた。

 だけど、まさかこの後、あんなことが起きるなんて想像もしていなかった。

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