61日目 嘘嘘告白
南木さんの事が好きなんだ、と友人二人に言うと、やめておけ、と説得された。
「黄瀬はあんまり接点ないし、難しいって」
青木君はそんな風に言ったが、僕は自信が無いわけでもなかった。
「最近グループ課題で一緒になることも多いじゃん。それに、オレの方を見てくれているような気がする」
「なんか、誰かと付き合っているらしいぞ」
白田君がそんな噂を口にすると、僕も青木君も驚いた。
「そうなの? 誰?」
「いや、知らないけど」
しばらく付き合っている相手の話をすると、次の授業の鐘が鳴り始めてしまった。
「とにかく、諦めなって。な!」
「そうそう。絶対後悔するから」
そんな風に反対意見だけで話は終わってしまったのだが、僕は諦める事は出来なかった。もうその時既に僕は放課後に呼び出しの連絡をしてしまっていたのだ。
最後の自信をつけてもらおうとしたのだが、目論見は外れてしまった。二人から、そこまで強く反対されるとは思っていなかったので僕は残念だった。
放課後、ダメ元という気持ちで南木さんに告白すると、意外にもすんなりとオーケーがもらえた。
「誰かと付き合っているって聞いたんだけど?」
「なにそれ? 全然そんなことないよ」
ぼくは不審に思いながらも、付き合うことが出来たことを喜び、家に帰ってから、友人二人に告白が成功したことを連絡した。
すると、しばらくして白田君から電話がかかってきた。
「黄瀬、なんで告白しちゃったんだよ?」
「いや、成功したんだから良いじゃん」
「空気読めよ。今、大変なことになったぞ」
白田君が言うには、青木君は自分が南木さんの彼氏だと思っているのだそうだ。白田君が南木さんのフリをして青木君に嘘告白をしたのがきっかけらしい。
「青木は信じ切っていたのに。仕方ないから、黄瀬はオレからの嘘告白にだまされているってことにしたから」
「はぁ? ふざけんなよ」
「いや、本当にこのままだと、青木はショックで死にかねないから」
「いや、巻き込むなって」
僕は抵抗したのだが、白田君が「青木が死んだらお前のせいだぞ」という文句のせいで、「しばらくは教室では付き合っていることをはっきりさせない」という条件をのまされてしまった。
「できるだけ早く、やんわりと青木を振るようにするからさ」
白田君はそう言っていたのだが、なかなかうまくいかないようだった。
そうこうしているうちに、白田君は部活動の合宿が始まると言うことで、僕が青木君の嘘彼女である南木さんのフリをすることになった。
青木君に南木さんとして返信している横で、南木さんに返信することになり、よく分からない状態になってしまった。僕は頭の整理がつけづらいので、青木君の連絡を南木さんに、南木さんの反応を青木君に返すことにした。
そうこうしている南木さんの反応は好感触で、僕が自分で連絡している時よりも面白く感じていそうだった。
しばらくそれを続けていると、僕は自分に自信がなくなってしまって、本当に南木さんと青木君が付き合っていたら相性がよかっただろう、と思うようになってしまい、自分が一番の邪魔者に思い始めてきたのだった。
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