第6話 まさかの事実

私はいつの間にか土地神様の巫女になっていて、勝手にフィギュアを作製され、その出来に愚痴を言っただけなのに……。


なんで各組織のトップが集まっているのよぉ!


土地神グッズ販売所には大司教や商業ギルドや職人ギルドのギルドマスターが集まり、売り子の練習をしていた子供達はシスターと一緒に孤児院に戻ってしまったのである。


「お披露目までに作り直せるか?」


「無理だな……、シャルロッテ王女殿下のフィギュアを間に合わせるのだけでも、職人達に寝ないで仕事をさせているんだ。今さらそんなことを言われても不可能だ!」


商業GMギルドマスターが困った顔をして職人GMギルドマスターに問いかけると、不満顔で職人GMが答えた。


「ですが巫女様が納得していない土地神グッズを販売することはできません!」


巫女様って呼ぶのはやめて!


大司教は当然のように私のことを巫女扱いしているけど、根本的にそこが間違っている。


「ドロテア様に確認しながら巫女アーリン様の見本を作っただろ。なんで今さら……」


大叔母様ドロテア! 私はそんなこと聞いてないわよぉ!


「アーリンさん、ドロテア様から聞いていなかったの?」


「まったく……」


「「「…………」」」


シャル王女の問いかけに私が答えると、各組織のトップが困ったような顔で沈黙する。


大叔母様ドロテアのことだから深く考えずに対応していた気がする……。


「ドロテア様が許可したとしても本人にも確認するのは当然ではありませんか?」


「……申し訳ありません!」


大司教の問いかけに商業GMが頭を下げて答えた。


「しかし、巫女様を見ないで作った割に完成度は悪くないと思うぞ。表情だけ手直しすれば大丈夫じゃないか?」


職人GMが憮然としながらも答えた。


問題は顔じゃないから!


胸の大きさが不満だと言えるわけない。だから別の切り口でお願いをする。


「シャルロッテ王女殿下のフィギュアが間に合うなら、私のフィギュアの販売はやめてください!」


「そんなことをしたら土地神様にお叱りを受けてしまいます!」


なんで土地神様に叱られるのよぉ!


「あら、私を呼んだかしら?」


「「「土地神様!」」」


各組織のトップが即座に跪くのはやめてぇ!


「何度言えばわかるのかしら? 『誰にも親しまれる土地神!』というコンセプトに合わないから跪くのは禁止だと言ったでしょ。今度やったら神罰を与えるわよ?」


神罰って何よぉー!


各組織のトップが驚くような早さで立ち上がったけど顔色は真っ青だ。


「それでいいのよ。それより私の噂話をしていたのかしら?」


土地神様の問いかけに大司教が直立不動で説明した。


「そうねぇ~、確かにアーリンちゃんに似ていないわ。これだと目つきが優しすぎわね」


それはどういうことよぉーーー!


ここにいる全員が頷いているのも納得できない。


「その目よ! アーリンちゃんの目はこの目じゃないとダメよ!」


ジト目で土地神様を睨んでいたら、土地神様が私を指差してとんでもないことを言い出した。


「やめてください! 私のフィギュアなんか誰も買わないから、売らなくていいです!」


「それはダメよ。フィギュアを買ってくれた人には巫女が握手するともう告知してあるし、すでに予約券での販売でアーリンさんのフィギュアもたくさん売れているわ」


なに予約販売までしているのよぉ!


今になって信者獲得計画ファン獲得プロジェクトの話し合いに参加しなかったことを後悔する。


「アーリンさんには熱狂的マニアックなファンがいるのよねぇ~」


なんでフィギュアの胸の辺りを触りながら言うのよ!


私は熱狂的マニアックなファンと握手することを想像して背中に冷たいものが流れる。


「イ、 イヤよ!」


拒絶しようと声が漏れる。


「そうなの……、でも熱狂的マニアックなファンが納得してくれるかしら? あっ、逆にさらに熱狂的に応援するかもね!」


「土地神様、それだと熱狂的マニアックなファンが暴走することも考えられますわ。今でもアーリンさんのことを秘かに見ているぐらいです。暴走するとどうなるか心配ですわ!」


シャル王女が私の知らない事実を土地神様に説明した。


秘かに見ている! いつからよぉーーー!


私が呆然と思い当たることがないか考えていると、いつの間にか話し合いが終わってしまった。最後に私に許可を求めるように土地神様から尋ねられ、無意識で頷いて答えた。


そして各組織のトップが抱き合って喜ぶ姿を見て、私は取り返しのつかない返事をしてしまったとようやく気付いたのである。


全てが手遅れよぉ~。


私のフィギュアは目元だけ修正することになり、胸の部分の修正は一切話も出なかったみたいである。


そして土地神様のお披露目で、私とシャル王女が握手会を開くことも決定してしまった……。


何で大叔母様ドロテアの握手会はしないのよ!


文句を言いながらも大叔母様ドロテアが握手する姿など想像できない。


「二人にも歌と踊りを披露してもらおうかしら?」


土地神様! 恐ろしいことを言わないでぇ!


「それはダメですわ。アーリンさん歌わせたら、土地神様の顔に泥を塗ることになります!」


えっ、それはなぜ?


別に歌いたくないけど、その言い方は傷つくけど……。


ドナ「アーリンさんの歌は酷いからねぇ~」

ダニ「鼻歌であれほど音痴なのも珍しいわね!」


わ、私って音痴だったの!


自分が音痴だというまさかの事実を、この時初めて知ったのである。



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