第19話 ムカつく学園長
昨日の入学試験では色々とやらかしてしまった。
王都の屋敷に戻って迎賓館のお風呂で精神的な疲れを落とし、両親には無難に入学試験を終えたと報告していた。
な、なんで学園から呼び出されるのよぉ~!
朝早くから学園からの使いが来て、午後には両親と学園に来るようにと連絡があった。
「それで何をしたんだい?」
お父様は少し疲れたような表情だけど、優しく尋ねてきた。私は色々と端折って説明する。
「わ、私は何も悪いことをしていませんわ。受付でレベル一桁だと大きな声で言われてしまって注目を集めたくらいかしら。学科試験も完璧にできましたし、魔術の実技試験も問題ありませんでした。武術の実技試験は……試験用のロッドがなかったので、試験官に許可をもらって自分のロッドで試験を受けただけです」
無難な説明ができたと思ったが、お父様は驚いたようで立ち上がって失礼なことを聞いてきた。
「ま、まさか相手に大怪我でもさせたのか!?」
「そんなことしていませんわ! 怪我をさせられたのは私です。あっ!」
余計なことを言ってしまい、両親は驚いた表情で固まっている。
お父様はさらに疲れたような表情になり、脱力したようにソファに腰を下ろして呟くように尋ねてきた。
「全部詳しく説明しなさい。隠しても学園に行けば分かることだよ……」
お父様達には少し申し訳ない気持ちになったけど、悪いことをした覚えはない。
それでもこれ以上の隠し事はできないと諦めて、昨日のことを詳しく説明したのだった。
説明を聞いたお父様は大きな溜息をつき、お母様は額に手を置いている。祖母様だけはいつもと変わらない表情をしていた。
「あら、アーリンに怪我をさせたのが相手なら、謝罪でもしてくるのではないかしら?」
祖母様は
「お義母様、アーリンが
「そうねぇ~、それは嫌ねぇ」
なんか普通に酷いことを言われている気がするわ。
お母様も祖母様も国の英雄でもある
お父様はそんなに辛そうな顔をしないで……。
「まあ、アーリンにも問題はありそうだが、別に悪いことをしたわけではないようだな……。しかし、私は今日も国王陛下にお会いする約束があるからなぁ……」
「私もゴドウィン侯爵の奥方達と約束がありますわ。他の貴族家のご夫人達も招待すると言われてましてよ……」
お父様とお母様は忙しいみたいね……。
「それなら私がアーリンと学園に行ってきます。問題は無いでしょう」
祖母様が一緒に学園に行ってくれるみたい。
お父様もお母様もなぜか心配そうでしたけど、祖母様に任せたのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
祖母様と一緒に学園に行くと、実技試験の試験官をしていた女性教師が応接室まで案内してくれた。学園は前日の入学試験日とは雰囲気がまるで違っていて、静まり返っていて逆に不安になる。
案内された部屋に入ると小太りで嫌味っぽい老齢の男の人が待っていた。
「私は学園長をしているハーディ男爵家のブレヒだ」
えっ、男爵家のブレヒ! 当主じゃないんだ!?
なぜか露骨に不満そうな表情をして、尊大ともいえる態度で自己紹介してきた。
男爵家なら准男爵家より上位ではあるけど、当主でも無いのにここまで偉そうに話をするのだと私は驚いていた。
「私は両親と一緒に来るように使いを出したはずだが、両親はどうしたのだ?」
王都の貴族社会ではこれが普通のことなのかと驚いた。
「私はここにいるアーリンの祖母ですわ。碌に用件も伝えず、こちらの都合も確認せずに当日に呼び出しておいて、そのような話し方は失礼ではありませんか?」
私が思っていたことを祖母様がハッキリと言ってくれた。祖母様の毅然とした態度に学園長は少し驚いたような表情をしていた。彼はさらに顔を歪めて不満そうに言った。
「他にどのような都合があろうと、学園からの呼び出しに駆けつけるのが両親として当然の事ではないのか! 准男爵家といえ、そのくらいのことも分からんのか!?」
あぁ゛、なによこのジジイ!
露骨に我が家を馬鹿にしているともいえる学園長の発言に、口には出せないようなことを考えてしまった。
祖母様は笑顔を絶やすことはなかったけど、冷え切った声で学園長に答えた。
「わかりましたわ。この子の父親は国王陛下との約束で王宮に出向いています。母親はゴドウィン侯爵家やその他の貴族とのお約束があり、侯爵家に出向いています。国王陛下や侯爵様のお約束より、学園長からの呼び出しが優先だと言われたと、使いを出して呼び戻しましょう。両親が戻ってから改めて出直してまいりますわ。アーリン、帰りますよ」
くふぅ~、さすが祖母様!
本当のことしか話していないけど、学園長は顔色を変えて狼狽えさせたわ。
「わかりましたわ」
祖母様が立ち上がってので、私も返事しながら立ち上がった。
「ま、待ってくれ! へ、陛下や侯爵家との約束があったのなら、別に構わない!」
「あら、男爵家の係累である学園長さんは、他にどのような都合があろうと仰いましたわね。まさか貴族の子女が通う学園の学園長が、ご自分で話されたことを簡単に変えるわけではありませんわね?」
凄いわ、祖母様!
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