第50話 やきもち
外野がうるさいものだから、ちょっと早いけど部活を切り上げて、いつもの喫茶店『
』によることになった。例によっておれには宿題があるけれど、強盗団だけならお手の物ってわけさ。
それに、糸子さんが電話番号とメールアドレスを教えてくれたんだからなっ。がんはらなきゃだぜ。
もうさ、部室のドア開けるのがおれの役目なわけよ。
「みなの者、ひかえおろう!!」
「ははーっ!!」
なんて感じで、ドアに張り付いていたギャラリーをかきわけて、糸子さんを守るように三人がガードする。
みんなが出たところでおれだけ部室に閉じ込められて、鍵まで閉められてしまった。
「おおーい、開けてくれよー。暑いよー。さもしいよぉー」
どうやらおれのリアクションに満足してくれたらしいギャリーから笑いが起こって、ようやく廊下に出ることをゆるされた。
ってか、なんでおれだけ罰ゲームなのよ? おれ、なにかしたっけ?
って、薫を見ると、ちょっと怒ったような顔をしていた。
あ。まさか。おれの脳内ダダ漏れのせいで、糸子さんから教えてもらった秘密がすでにバレちまった? そのせい?
「行こうぜ、努」
ちょっとなんとも言えない気持ちでたたずんでしまったおれの肩を、舜がうながす。こういうところ、紳士的なんだよな。舜って。
まぁ、いっかぁ。薫が糸子さんを想う気持ちは母親に対してのそれだと聞いたばかりだし。おれのとは違うとも言っていたし。よし。おれは信じる男だ。信じると決めたら信じる一択。
そんなわけで今日もたわいもない話をしながら、フロマージュを食べたのだった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます