ロマンス劇『ノーマ・ジーンに惚れた男』
〈キャスト〉
※青年……海原 薫
※ノーマ・ジーン……空野 響
※老人、及びガードマン……陸田 瞬
※警官……川崎 糸子
※語り部……山口 努
〈ただいまより、ロマンス劇『ノーマ・ジーンに惚れた男』を上演いたします。最後までごゆっくりご観劇ください〉
※開演ブザー
※語り部の話にあわせて、演者が芝居をする。
☆☆☆
少年は自分とおなじ環境で育ったノーマ・ジーンに、恥ずかしながら恋をしていました。初恋です。
ですが、あれほど焦がれたノーマ・ジーンは、年頃になると、その若さと美貌を買われてお金持ちのお爺さんの家に嫁いでしまいました。
すっかり青年へと成長した彼は、ノーマ・ジーンがいじめられていやしないか、心配で心配でたまりませんでした。
なぜならノーマ・ジーンはとてもうつくしかったのですがただひとつ、欠点がありました。それは、鼻の下にホクロがあることです。
そのせいで幼少期にいじめられていたのを、青年が助けてあげていたのです。
ノーマ・ジーンが嫁いで数年経ったある日、一生懸命働いて稼いだお金をすべて持ち、青年は彼女を訪ねて行きます。
このお金では足りないだろうと思ってはいたのですが、なんとか彼女を取り戻したかったのです。
ところが、お金持ちのお爺さんの家に行くと、ノーマ・ジーンの姿はありませんでした。
彼女はこの家に嫁いで来てすぐ、お爺さんの権力を行使して、美容整形でホクロを取り去り、いっそううつくしく姿を変えて、消えてしまったのだと言います。
お爺さんは青年に、お前がそそのかしたのだろう!? と罵詈雑言を並べ立て、青年を杖で何回も殴りました。
そうしてぐったりと動かなくなった青年に対して、お爺さんは警察を呼んで泥棒が入ったからこらしめておいた、と嘘をつき、青年を牢屋の中に入れてしまいました。
冷たい牢獄の中で、青年はそれでもノーマ・ジーンのことを思います。
彼女は今、どこにいるのだろう? ひもじい思いをしてはいないだろうか? 寒い思いをしてはいないだろうか? 誰かにいじめられてはいないだろうか?
幼い頃、誰からも愛されなかったノーマ・ジーンを知っているからこそ、彼女のことが心配でなりませんでした。
牢から出た青年は、懲りずにまたお爺さんの元に向かいます。はたしてお爺さんは、目の前のテレビの中にいるのがお前の探し人だと、酒瓶を握りしめて言いました。
青年は食い入るようにテレビを見ます。そこにはたいそううつくしい女性が、媚びるように笑っていたのです。スカート丈はとても短く、胸元もざっくり開いた衣装に、青年は胸がムカムカしてきました。
「これがお前の探しているノーマ・ジーンだ」
お爺さんの言葉に、青年は絶望しました。
その人は、お国の偉い人の愛人だったのですから。
つづく
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