第14話 幼馴染みは騎乗位が上手
とり憑いた悪霊が、瑠璃の体を使って距離を詰めてくる。右足を進めるのに合わせて右の正拳、続けて左足に合わせて左正拳。もう一度右手で顔面に正拳。
後退させられていた俺はバランスを戻す暇もなく、手だけでガード。最初のボディに来た2発はなんとか守ったが、最後の3発目は顔面に。
意識を下に向けさせられていた俺は、あっさりと顔面に正拳を喰らう。
俺は後に吹き飛ばされ、今度は立っていられず尻餅をつく。持っていたお札を落としてしまう。
瑠璃は間髪を入れず俺に馬乗りになってくる。
そして顔面に拳を叩き込む。
俺は仰向けに寝て、拳を避ける。
瑠璃は連続した拳で追撃。
俺は仰向けに転がされて、マウントをとった瑠璃に一方的に殴られる。
俺は両腕を顔面に上げてガードする。
瑠璃は両腕が上がったところを見越して、空いた脇腹の左右に拳を叩き込む。
息が詰まる。
俺は腕を下げて脇腹を守る。
顔面が空いた。
瑠璃は右手を曲げ、肘を下にして顔面に落とした。
あ、ダメだわ、これ。
意識が薄れる。
顔面に拳を打ち付けていたときからハメられていた。硬い頭部を拳で殴るのは、拳を痛める恐れがある。これは頭を守らすための見せ技。本命は脇腹への攻撃。そして顔面が空いたところへの肘。最後を肘にしたのは当てるつもりだから。怪我をしやすい拳ではなく肘を選んだ。
「兄さん!」祐実の叫びで意識を戻される。
祐実は走り寄って、瑠璃に飛びかかる。飛び込んでのタックル。
しかし瑠璃は打ち下ろした右肘を上げ、拳の裏で払った。裏拳が飛びかかった祐実の右頬を打つ。そのまま祐実の体は左に軌道をそらされ、瑠璃をつかむこと無く地面に倒れこんだ。
祐実が体を張って手繰り寄せたチャンスを掴む。
瑠璃が体を起こして、右手を振り抜いていた。
右脇が空いている。
俺は左手を外から回り込む軌道で、瑠璃の脇腹に叩き込む。
合わせて、エビぞりになりながら体を右に回す。体を地面から離し、四つん這いで下を向く。このまま立ち上がって、瑠璃のマウントから抜け出そうとした。
しかし、瑠璃は俺の背中に覆い被さってきた。瑠璃の左腕が俺の首に後から巻き付く。更に右手の肘裏で自分の右手首をロックし、左手が俺の首から外れないようにする。
俺は息を止めて首に力を込める。アゴで瑠璃の腕を抑え、首を絞められないようにする。
瑠璃は右手の手のひらで俺の頭を抑え下を向けようとしてきた。
俺が下を向いたら、首を絞められて落ちるだけだ。
立ち上がって振りほどこうとするが、重心を移した先に瑠璃が体重をかけてくる。
瑠璃の方が俺より体重が軽いはずなのに、立ち上がれない。不安定な態勢から立ち上がるには、安定した重心移動が必要だ。重心の移動をジャマされるだけで、立ち上げれなくなってしまう。
なんとかしないと。
祐実はまだ動けないようだ。
どうしたら?
「ご主人様!」
薄れ行く視界の先に、睦瑞希がいた。
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