第16話
★◇◇◇◇◇◇
「とりあえず、俺の術が現実に干渉する以上は、自衛以外の目的では断りたいのが本音。」
「その言葉が取れただけでも、良いです。
こちらも自衛をしてくれるのならそれで構いません。
幽世から来る彼らは友好的な者もいます。
もちろんだまし取ろうとする者も。
自衛すると言ってくれた以上はこちらも戦力を咲く必要は無いですし、あなたなら大抵のモノたちなら倒せるでしょう。
それに警戒心も強いのが良いですね。」
この人、会ってしばらくしか経っていないのに、どこまで見ているんだろう。
政治家にでも成れそうだ。
「じゃあ帰っていい?」
「構いませんがお茶を一杯如何ですか?」
「明日も期末の続きがあるから帰って勉強したいんだ。」
「それなら仕方がありませんね。」
平穏を楽しみ、平穏の赴くままに生きることなんて異世界に行かなきゃ経験できなかったこと。
それを手放すのは嫌だ。
戦場に行って人を殺しこそしなかったが、日本がどれだけ平和で、技術が発展していたかをまだ味わって居たい。
帰り道に電灯が付いている場所があるだけでもありがたく感じる薄幸のまま帰路に就いた。
◇◇◇◇◇
「彼の実力はどのくらいのモノだったかしら。」
神崎家の現当主に向かい話しかける。
子どもたちはこの場にいない。
皆寝てしまっている。
彼らは昔から退魔師、陰陽師として名を馳せていた一族の集団、組織化されている血縁者たち。
幽世の脅威から護るモノたち、幻世と呼ばれている。
「戦闘力で言えば、雄馬を赤子をひねる程度だろうね。」
「あなたはどうですか?」
「私はどうだろうね。
幽世との戦いなら私が勝つかもしれないが、純粋な身体能力を用いた話ではどうなるかはわからないと回答するかな。」
「あなたで倒せなければ我々も動くことができませんが。」
「監視するだけ無駄だと思うよ。
莫大な魔力持つ、雄馬に対してものともせずにいたんだから、技巧は誰よりも強いだろう。
私たちでさえ雄馬の魅了には、手を焼いた。」
どんなに積み上げた石も大きな波の前には成す術もなく崩れ去る。
その例えが最もしっくりくる莫大な魔力を全ての技巧を排除する。
「あの子たちは大丈夫かしら。」
雄馬のせいで必然的に肉体改造が行われ、人生が瞬く間に変わってしまった。
人間としての生活がしたかったといつも話していた彼女たち。
雄馬も雄馬で自分が人生を変えていたのが分かっていたのだろう。
異世界で気にせず、自由に生きられるようになったあの環境下で天狗に成って当然かもしれない。
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