七、独りぼっち
久資は死んだ
命はどこに行ったんだろう
天国に行ったのかな
馬鹿馬鹿しい
そんなに大層なものじゃないでしょ
君の靴裏で死んだクロアリ
君の指先で死んだアカダニ
わたしたちは知らず知らずのうちに命を摘んでいる
死ぬことなんて大したことじゃない
ただ 君のエゴがそれを大層にしているのさ
道端で死んだ野良犬
車に撥ねられた野良猫
なんとも思わないでしょ
うわ 気持ち悪い くそ 車が汚れた
口を衝いて出るのは文句だけ
事故で亡くなった最愛のヒト
病気で亡くなった愛しい我が子
もう立ち直れない どうしてこの子が
畜生には 亡くなった なんて言葉も使われない
求めてないけど 同情も哀れみも薄っぺらい
打ち捨てられて ウジに集られながら朽ちていくんだ
偽善者が
人間なんて大嫌いだ
上品ぶって やってることは畜生以下だよ
みんな自分とその周りが幸せだったら十分
どこで誰がどんな死に方をしようと どれだけ多くが死のうと
知ったことじゃない
やろと思えば救える力があるのに
薄情者が
遂に正体を現したね
化けの皮を剥いでやった
自分さえ良ければそれでいいんだ
自分ひとりだけで生きていると思ってる
自分ひとりだけで生きているのは
わたしたちのような落伍者だけだよ
でも
久資はちがった
ちがった様な気がしたんだ
わたしの思い違いでもいい
嘘でもいい
揶揄されてもいい
どうして人が死んだだけなのに
どうしてわたしは こんなに苦しいんだろう
久資の家の前には警察
明も三原さんもいる
久資のために泣いてくれるのかい
わたしの代わりに泣いてくれるのかい
駄目だよ
それもエゴだから
わたしは駆ける
久資 君の夢はなんだったかな
自由になりたい
まだ見ぬ世界を見たい
わたしはそこまで行けないけど
遠くに行こう
距離じゃない
気持ちの長さだよ
わたしは駆ける
チーターよりも速く
カメよりも遅く
長い永い時間を
わたしは長生きできないけど
叶えてみせるよ
エゴでもいい
勝手に言ってよ
だって
久資はわたしが信じた人間だから
こんな河川敷ともオサラバだよ
みんなサヨウナラ
新しい一日を始めよう
や っ と 解 放 さ れ る
待っていてね久資
君の望んだ夢を一緒に見よう
も う 夢 の 中 で 呆 け て ん だ ろ う が
さっきからうるさいな
もうひとりのわたしが顔を見せた
真っ暗でドロドロしたわたし
でも もう少し辛抱してね
君じゃあ 久資の夢は叶えられない
わたしじゃないと駄目なんだよ
わたしは誰なのだろう
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