第22話
「ふんふんふ~ん。ふふふんふ~ん」
頭巾で鼻と口を覆ったシーフィーは、鼻歌交じりに神殿の内部の埃を湿らせていた。さっき外壁の蔦を払い、丸っと水洗いに乾燥と結構な量の魔力を消費したはずなのに、すこぶる元気でこちらがヒヤヒヤする。今も昼までに、埃を払いきるのだと張り切っている。午後一気に疲れが出るのではと、気が気でないが本人のやる気は尊重したい。俺は、ヤキモキした気持ちと一緒に作業する羽目になった。
長年積もった埃は、中々に手ごわい。俺は高いところの埃をシーフィーの水魔法の霧で湿らせてもらってから除去していく。最初に水で湿らせるのは、グリッドさんに教えてもらったらしい。埃が舞い上がらずに、掃除ができるそうだ。
シーフィーは俺の肩に肩車状態で、俺が埃を除去した傍から仕上げ作業で洗浄と乾燥を掛けていく。広範囲を一気に洗浄するのは難しいらしく、この状態に落ち着いた。シーフィーの魔力量ありきの作戦だが、シーフィーは何故か存分に楽しんでいる。
神殿の一階にある玄関広間、大広間と待合室を仕上げて昼を過ぎた。流石の俺も、ぶっ通しでの肩車作業に疲れを感じている。待合室の綺麗に拭かれた机にマリエラさんが作ってくれた昼食を広げると、2人揃って競う様に食べ尽くした。やはり、しっかり働くと、しっかり腹が減る。そして、満腹になると眠気が誘う。シーフィーはすぐにウトウトと舟をこぎ出して、俺の膝を枕にしてお昼寝してしまった。時間は決められていないし、ほんの少し休憩しても誰も責めないだろうと、俺も少し体力の回復に努めることにした。
目が覚めると、さほど時間は経っていなかった様だ。まだ高い位置にある太陽を確認して、俺の足に涎を垂らしているシーフィーを起こして掃除を再開した。シーフィーも俺も昼寝が効いたのか、残りの部屋も精力的に掃除していった。夕方前には目標の部屋数を掃除し終えて神殿を後にした。
神殿部分の掃除は明日には終わるとアトモスさんに報告をして宿に戻ると、今日も夕飯が美味しかった。明日の昼食も頼むと満腹の体を引きずって部屋に上がる。扉を開けると、シーフィーが着替えも風呂も終えずに寝ようとしていた。俺はシーフィーにせめて体を拭いて埃を落としてから着替えて寝ろと、言いつけて自分も風呂に入った。湯船に浸かると、俺の体は疲れを湯の中に放出していく。ほぅ~と息を吐いて、風呂を堪能してから部屋に入ると、シーフィーが体を拭いただろう跡と着替え途中のまま床で鼾をかいているシーフィーを見つけて笑ってしまった。
この子は…手がかかる…だが、それも何だかんだで俺は楽しんでいる。それが、何故かくすぐったく感じて、寝付くまでに少し時間が掛かった。
翌朝も、シーフィーは組合を経由して元気に神殿まで歩く。前日までに終わっている場所以外の共有部分などの装飾品の台座など細々した掃除を昼までに終わらせて、昼食を取って昼寝する。相変わらず俺の足を枕に涎を垂らすシーフィーは、出会った数日前よりも重たくなった気がする。子供の成長は早いと、よく聞いてはいたがこんな速さで成長していくものなのだろうか…こんな速さで成長されたら、別れが来る日が早くなるようで少し寂しいと思ってしまう。そんな気持ちを知ってか知らずか、シーフィーは良く働き、よく食べて、よく眠る。シーフィーの頭を撫でてから、俺は自分の休息を取るために目を閉じた。
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