50.事なかれ主義者の正体がばれた?
ホムラが飴を与えて情報を得る、と言った翌日の朝。
ホムラは『なくならない飴』をたくさん持って持って出ていった。
魔力マシマシ飴って名前じゃ誤解されるから、とホムラによって改名された僕が作った魔道具だ。
一定の期間が経ったら効果がなくなる制約を付けた上で、最初に流された魔力以外の魔力では作動しない魔力認証を【付与】したものだ。
情報と引き換えに渡して、また数日後に何かしらの情報を持ってやってくるように伝えるそうだ。
「量産をお願いします、マスター」
「量産って言っても、どのくらい作ればいいの?」
「あればあるだけ助かります、マスター」
出かける間際にそんなやり取りがあり、僕は大人しく浮遊台車を作った後に魔力マシマシ飴を舐めながら『なくならない飴』を作っていた。
甘くなくなるからなくならないわけではない気がするんだけどなぁ。
そんな事を考えつつ『加工』で棒付きの鉄球を作っていく。
僕の隣では体調がとても良さそうなノエルが、げんなりした様子でひたすら同じ事を鉄球の部分に刻んでいる。
「シズト様ー、同じ事ばかりで飽きてきたっすー」
「僕だって我慢してるんだからノエルは早く期限を刻んでいってよ」
「必要性は分かるっすけど、同じ魔法文字ばかり刻むのはしんどいっす。魔道具の解明をしていたいから他の魔道具を観察してたいっす。もっと人手とか増やしてほしいっすー。それか、徹夜の許可を!」
「僕も強制睡眠の被害者なんだから僕に言っても意味ないでしょう」
「そんな事ないっすよ。シズト様が言ったらホムラ様に監視された状態で馬車馬のごとく働かされるって気がするっすよ?」
「言う事最近聞かない事あるからなぁ」
主に僕のお世話についてだけど。
何度言ったって翌日には一緒にお風呂に入ろうとするし、着替えを手伝おうとしようとするし、未だに強制睡眠ばっかりだし。
「それなら安眠カバーを無効化する物を作ればいいじゃないっすか」
「いや、普通にもう作ってるよ? でもすぐにホムラにバレて没収されてますよ?」
「本当にシズト様、魔法生物の主なんすか?」
「僕も最近ちょっと疑問に思ってる」
どこでああなったんだろうなぁ。
イメージ通りに作られたんだったら従順なホムンクルスのはずなんだけど。
自分で考えるように、って言ったからかな?
……なんかそれな気がしてきた。
AIとかに学習機能つけたら自我が芽生えて人間と争い始める映画とかもあったし、ちょっと気を付けないと。
自作のホムンクルスがラスボスになった、とか笑えんわ。
そんな事を考えながら夕方になるまでひたすら二人で流れ作業をつづけた。
【加工】を使う程度だったら全然平気なくらい魔力量が増えているって実感できたからまあ良しとしよう。
ホムラは陽が暮れる少し前に戻ってきて、ノエルが使っている部屋にやってきた。
そのままホムラが集めてきた情報のお披露目会が行われる事になって、僕は一応作業の手を止めたが、ノエルはひたすら単純作業をする作業員になっている。
ホムラが集めてきた情報はすべて鵜吞みにする訳にはいかない、と最初にホムラが言ってきたが、それはそうだろうと思う。
ただ、今後の情報収集の精度を高めるためにも、ちょっと噓発見器みたいなものを作れないか考えながらホムラの話を聞く。
うん、いろいろ作れそうだからちょっと絞らないとね。
「夫婦喧嘩等の噂も聞きますか、マスター?」
「いや、そういうの要らないから勇者について教えてくれない? 本当にドランにいるの?」
「分かりません、マスター。そもそも、加護持ちの話を持ってくる相手がいませんでした。それとなくこちらが求めている情報がどういうものなのかは伝えてきたので、今後の動きに期待するしかありません」
「それじゃあ、それまでに嘘発見器でも作っとくか」
「またとんでもないものを作ろうとしてるっす……」
「マスターのご意思に何か不満でも?」
「いえ、なんもないっす!!」
ノエルとホムラが何か楽しそうにお喋りをしているのを置いておいて、どういうものがいいかなぁ、と考える。
やっぱり、嘘ついたらなんかそれとなーくわかるものよりも、明らかに嘘ついてますって分かるような物の方がいいよね。それを見て報酬の飴をあげるか判断できるし相手にもどうして報酬がもらえないのか言えるし。今後絶対適当な事を言って手に入れようとし始めるやつが出てくるはずだから早めに作っとこう。
そんな事を考えていたら、唐突にノエルの部屋の扉が開いた。
金色のツインドリルが頭についているレヴィが息を切らせてやってきて、その後に見た事がないメイド服姿の女性と眠たそうな目をしているドーラさんがやってきた。
「ちょっとシズト、貴方が異世界転移者って本当なのですわ!?」
「え、それって本当なんすか!? って、よくよく考えたらいつも変な事してるから納得っすね」
「マスターの行いに対してそのような事を考えていたのですね」
「え、なんで怒ってるっすか!」
「怒ってないです。ちょっとお話が必要だと思っているだけです。マスター、すこしノエルと話をしてきます」
「え、あ、はい」
「めちゃくちゃ怖いっす~~~~~~~~~………」
ホムラに襟首を掴まれたノエルは引き摺られて外に通じる扉から部屋を出ていった。
……さて、どう返事をしたものかなぁ。
真剣な表情でこちらを見ているレヴィになんて答えようかなぁ、と悩んで……とりあえず愛想笑いしておいた。
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