第4章 助手と一緒に魔道具を作って生きていく
43.事なかれ主義者のダイエット法①
ドーラさんとは親戚らしい。確かにドーラさんと髪の色も瞳の色も一緒だ。
そんなレヴィさんだが、見ての通り太っている。丸々と、太っている。何でもとても嫌な事があって、一時期自暴自棄になって暴飲暴食をしていたらしい。
今はそんな過去の傷よりも、何かは教えてもらえなかったが新しく得た目標のために頑張る、と一念発起してダイエットに挑戦したんだとか。
でも、甘味についつい手が出てしまい、なかなか思うようにいかなかったらしい。
そんな時に『太らない飴』に出会ったのだとか。……魔力マシマシ飴って名前なんだけど。
それに加えて、『激痩せ腹巻』を手に入れた彼女は、甘味絶ちにも成功したので若干痩せたんだとか。……腹巻ってそんな名前にしてたっけ? ホムラにネーミング任せてたから分かんないけど。
色々疑問に思う所はあったけど、彼女の話はまだ続いている。
「私はもっともっと痩せたいのですわ。それもできるだけ早く! なぜかは明かせないのですわ。でも、ダイエットに成功した暁にはそれ相応の報酬を払うと約束いたしますわ!」
「具体的にはいくら貰えるの?」
「私のお小遣いから出せる金額にも限りがあるのですわ。一カ月以内であれば大金貨十枚を出しても構わないのですわ。一カ月から二カ月なら九枚、二カ月から三カ月なら八枚と段々下げていくのですわ。分かっているのですわ、その程度魔道具師の貴方ならば簡単に稼げてしまうでしょう?」
いや、そんな稼げないと思うんですけどね。
ああ、でも魔道具作れる量増えてるしいけなくはないのかな?
あとは売る物によって変わるのかな? 基本僕が作りたいものしか作ってないけど、需要が高くて供給が少ない物なんてたくさんあるだろうし。
「そこで、私考えたのですわ。貴方になくて私にある物を思いついたのですわ! 私、こう見えて社交界にも出た事があるのですわ。私が痩せる事で、私を知っている方たちは思うはずですわ。『あんなにブクブクに太っていたのに何が起こったのですわ!?』」
「なるほど、実例として見せて宣伝してくれるんですね」
「そうですわ。もちろん、今のままでも一年後には目標のスタイルにはなれると分かっているのですわ。ただ、それでは出遅れてしまうのですわ。なので、何よりも早く痩せたいのですわ! ご協力をお願いするのですわ!!」
んー、できるか分かんないけど、美容に関するものはきっと高く売れるだろうし、わざわざ宣伝しなくても彼女がしてくれるだろうし……。
僕もちょっと運動不足気味だったし、一緒にダイエット頑張るかぁ。
そう心に決めて、レヴィのダイエットについてしばらく頭がいっぱいになる僕だった。
ダイエットに必要なものとは何か。
諦めない精神? 弛まぬ努力?? 圧倒的経済力??? どれも大事だとは思うけど、とりあえず彼女と僕に必要なものは……きちんとご飯を食べる事だと思う! いや、だって、痩せるのは魔道具で補助できるだろうし。
と、いう事で用意された朝ご飯をレヴィさんもついでに食べる事になった。
隣のレヴィさん小刻みに震えている。怒りからではなく、物理的に。
「常に身につけて魔力を流しておけば魔法のトレーニングになるのですわ~」
「ああ、魔力マシマシ飴と同じ考え方ですね。僕も着けよっと」
「シズト~、私を気遣って敬語を使わなくていいのですわ~。ここにいる間は身分に関係なく、貴方は私のパートナーなのですわ~。気楽に行くのですわ~」
「まあ、レヴィさんがそういうならいいけど」
社交界に出るって言ってたけど、どこかいい所のお嬢さんじゃないかちょっと心配なんですよね。
まあ、この屋敷の敷地に入るためにはせっせと追加して回った魔道具が反応するはずだから身内しかいないわけで、ため口くらいで機嫌が良くなるなら他の人に見られるわけでもないし、いいか。
「それにしても、昔はよくドーラと屋台のご飯を食べたけれど、何も変わっていないのですわ~。この肉串は程よく調味料を使っていてとてもおいしいのですわ~。こっちの甘味は新しくできたものですわ~? ……ああ、気になるけれどダイエットを頑張ると決めたのですわ~。甘い物を避けて通らなければならないのですわ~」
「行動と言葉が一致してないんだよなぁ」
甘い物を片っ端から見つけては食べていくレヴィさん。
懐かしい物を見つければ、嬉しそうにドーラさんに見せているし、新しい物を見つければ早速舌鼓を打っているし。
そんな彼女にドーラさんが端的に忠告した。
「そんなに食べると太る」
「そ、そんな事ないのですわ~! 激やせ腹巻を巻いているからすぐに食べたものも消費されるに違いないのですわ~!!」
「太ってる」
「魔道具がない時に太っちゃったのですわ! そういう貴女こそ、そんなに食べて大丈夫なのですわ? 私よりも多いように思うのですわ?」
「私はいい。太りにくい体質」
「ずるいのですわ!!」
そんな二人を放置してご飯を食べる僕。
とりあえず、ご飯中に脂肪燃焼できるものってないのかなぁ。
ダイエット用品なんて、前世だとあんまり見た記憶がない。……一人で考えるより他の人と話した方がいいか。ノエルの所に行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます