第7話 #ハル





 夏休みが終わり2学期が始まると、俺もマキもバイトの時間を減らし、俺は勉強の時間を増やし、マキは高校の友達と遊ぶ時間が増えた。


 それでも定休日は毎週二人でデートしたし、週末タイミング(家族が留守)が合えば、俺やマキの部屋でエッチをした。



 1年の間はずっとこんな調子だった。


 学校の勉強に疲れ、息抜きでお店で鍋を振るい、癒しを求めてマキと過ごしてエッチする。 そんな生活が良かったのか、2年になるころには学校の勉強にも余裕が持てるようになり、順位も安定して学年で20番前後を維持出来ていた。


 2年では文系の習熟クラス(成績上位者が集められたクラス)に入ることが出来、クラスメイト達との会話も増えたし、友達も出来て連絡先を何人かと交換した。 そんな感じで2年の習熟クラスでは1年の頃と違って、みんな余裕があるように見えた。 多分俺も含めて、成績上位であることの自信や自負があるから精神的に余裕があるんだと思った。



 そしてこのクラスにはその習熟クラスに似つかわしくない容姿の女子が居た。


 その女子は、片岡ナナという名前で、容姿は所謂ギャルだった。

 しかもかなり濃いギャル。 

 ウェーブかかった金髪をツインテールにしてて、メイクはいつもバッチリ。

 まつげはマスカラでくるくるピンピンにしてて耳には複数のピアス、制服は気崩してスカートは下着が見えそうなくらい短く、派手なネイルを付けた手で器用にノートを取る姿が印象的だった。


 校則が緩い高校なので、それで問題になるようなことは無いが、とにかく場違い感が凄かった。 そして本人はフレンドリーなのだが、周りは女子も男子も少し距離を置いてる感じ。

 嫌われてないけど、怖がられてる? なんかガッチリしてて骨とか太そうで殴り合いのケンカとか強そうだし。


 俺自身はそんな片岡に興味を惹かれた。

 異性としてでは無くて、珍獣として? 「そのツメで狩りでもすんのかよ!絶対勉強の邪魔じゃん!」と突っ込みたい思いを密かに胸に秘めて。 


 とは言え、遠くから観察しているだけの俺とは、たまに会話する程度で急に仲良くなることも無く、こちらからも話しかける様なことはしなかった。






 そんな片岡が7月に入ると話しかけてくることが多くなった。



「松山って、カノジョ居るんでしょ?いつから?」


「え?急にナニ?」


「ちょくちょく見かけたし。よく学校帰りに南高の制服着たカノジョとデートしてるでしょ?」


「そんなに頻繁じゃないけど、そうだね。 で?」


「いつから?」


「中3から」


「うお!?結構長いじゃん! 可愛い子だったもんね! へぇ~中3からかぁ」


 片岡がフレンドリーなのはいつものことだから気にしないが、教室でカノジョの事を大声で喋るのは勘弁して欲しかった。



「よく解らんが、プライベートな話はもう少しボリューム落してくれ」


「あーごめんごめん! 何度か見かけた事あってさ、先週駅前でデートしてたでしょ? 二人がすっごい楽しそうにイチャイチャしてたから、松山ってあんな顔するんだぁ!?ってビックリしてね」


「それを言ったら、片岡さんのが凄いんだが」


「え?私?普通だよ?」


「いや、こんなコテコテギャルが俺より順位上とか、違和感しか無いぞ」


「コテコテギャルってなんかウケる!」


「いや、お前のことだから」


「あ!そだ! スマホ!連絡先交換しとこ!」


 そう言って、さも当たり前の様に連絡先交換を求められた。

 俺にとっては、マキと家族以外で初めて女子との連絡先交換だった。
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る