第13話

 ワクイに水色(焦り)が見えていた。だから僕は負ける気はしなかった。


 これまで訓練してくださった冒険者の皆さんは口をそろえて言っていた言葉があった。それは


「戦闘では焦ってはいけない。焦りが敗北につながる。焦ってはいけない。難しいことだがな」


と。僕はずっと教えられてきたから忘れていなかった。最初こそは焦っていたが、ワクイに水色(焦り)の感情が見えたから僕は落ち着きを取り戻せた。


 僕は落ち着いた状態でワクイの攻撃をかわし、いなし続けた。これに対し、ワクイはイラつきを抑えられずにいた。


 (なぜだ!?なぜこんなやつを殺せんのだ!!)


 ワクイはエルのことをなめていた。上位冒険者に訓練をつけてもらっていたことを知ってはいたが、ここまでだとは思ってもいなかった。また、もう一つワクイにとって予想外のことがあった。それはアーティファクトだ。ワクイが払う代償は2つあった。

 一つは体力だ。これは剣の代償で、使用者の体力を使い魔剣の効果を発揮する。

 二つ目は寿命だ。これはアクセサリーの効果で寿命を使い体力を回復、ブーストする。

 この二つの代償と効果が切れてしまうことにワクイは焦っていた。

 ワクイの寿命はあと30年ほどだったからだ(この世界の平均寿命は60歳。ワクイはこの時、30歳に近かった)。そのため、早く決着をつけたかった。

 しかし、エルが思ったよりも強く、予定していた時間を越し掛けていたのだ。


(なぜだ・・・!なぜこんなやつを殺せないのだ・・・!)


 ワクイの焦りはエルには伝わっていた。




わらびです。

休載のお知らせを消させていただきました。

また、ところどころの感情描写に忘れていた色の記載を追加しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る