第194話 入学「クラス(組)」
翌日。
朝の日課を済ませて、朝食を取り部屋に戻って学校へ行く準備をする。
制服に腕を通す。 支給された制服だけど新品でしかも布の質が高い。
領都の学校だけあるなぁ。
気分だけは新入生になった感じになってる、少し心が浮き足立っているよ。
今日は、授業の説明かな。
魔法学校に向かい、3組の教室に入る、数人がすでに席に着いている。
昨日、先生に食ってかかった男子生徒もいる。
昨日と違い、なんか機嫌が良いのは何でだろう?
私の席に座り、鞄を置く。
「あ、あの、おはようございます」
隣の席の女の子が、か細い声で挨拶をしてきた。
昨日は挨拶をしたら固まっていた子だ。
地味な風貌だけど、しっかり着飾れば美人さんになりそうな、地は良い感じのだね。
「おはようございます」
微笑に見える程度の顔を作って挨拶を返す。
ホッとしたような顔をしてくる。
ちょっと、山犬の子供を思い起こさせる可愛さだ。
「改めて、私はマイ。 コウの町の近くの村から来ました」
「え、えっと、はい。 私はステラです、領都の出身ですけど、普通の庶民で、その、えと、仲良くしてください」
ステラちゃんか、すごい一生懸命に仲良くなろうとしている。
うん、良い子だ。
「私こそよろしく、マイで良いよ」
「あ、私もステラでお願いしましゅ」
あ、噛んだ、可愛い。
席をずらして、握手を求める。
おずおずと、力をほとんど入れない優しい握手を返してきた。
そんなことをしているうちに、生徒が集まり、セン先生が入ってくる。
「さて、皆そろっているようだね。
今日の予定を話すよ、忘れないように。
まず、これから3ヶ月の授業の予定を話すからメモを取るように。
次に、教科書の借り方と返し方だ。生徒間での貸し借りは出来ないから、注意するようにね。
その後は、早速だけど試験をするよ、3組の生徒の学力を把握したいからね」
「俺は良いだろう、もう受けたんだし」
例の男子が言う、あ、そういうことか。
このクラスでは一番頭が良い事をアピールしているんだ。
ステラちゃんも受けたのかな?
横を向くと、フルフルと首を振る、ちょっと顔色が悪い。
初等教育を済ませていると申請した子供だけ試験を受けかのかなぁ?。
「今の学力がどの程度かで、授業のやり方を決めるから、入学試験を受けた子は成績が下がっていないように。
学力の把握だけだから、べつに悪くても何も無いよ」
あ、釘を刺された、それに授業はこれからだ、成績が悪くてもそれに合わせた内容になるだけだね。
そして、何も無い、今は・・・ね。
授業の予定も発表される。
3ヶ月、なんとほとんど初等教育の授業をになる、しかも午前中だけ。
席の前数列を初等教育の専用にするそうだ。
個人の判断で教室内で自習して構わないとのこと。
他の子が、何でか? と聞いたけど、その答えは、学力の差が大きくなっていることが多く、どのレベルの授業をしても合わない子が出てしまうから一番低い所に合わせる、とのこと。
うん、予想はしていたけど、前の学校以上に厳しい。
以前は、学力に合わせて更にグループを作って授業をしてくれていた。
今度は初等教育以外は自分で何とかしろというのだよ。
教師の数が足りていないのかな?
「じゃ、初等教育の教科書を借りに行こうか。
みんな付いてきて」
セン先生に付いて、勉強棟の入り口に行く。
窓口でセン先生が借りる手順を示す。
ここでも、身分証と貸し出す教科書を記録している。
「教科書は貴重品なので丁重に扱ってください。
また、本を汚したり傷つけたら報告するように、後から発覚すると処罰の対象になります。
居ないとは思いますが、意図的に他人の使用している教科書に手を加えるのは処罰ではすまなくなるので絶対にしないように。
さ、順番に借りてください、借りた人から教室に戻るように」
順番に教科書を借りていく。
毎回異なる教科書を借りることになるのかな、でかなり使い込まれてる。
教科書を持って教室に戻ると、さっそく授業が始まる。
試験も行われたけど、初等教育の前半部分だけだったので、特に記載する事は無かった。
■■■■
翌日、採点が終わった試験用紙を返却される。
当然だけど満点だ。 流石にここで間違えるわけにはいかないよ。
でも、かなりの子が肩を落としているのが判る。
隣のステラちゃんは、うん、良くできていた感じだ、フンスという鼻息が聞こえてきた気がした。
「試験の結果は確認したかな? 結果と自分の学力を考えてね。
初等教育を最初から受けたい子は、前の席に移動して。 授業を始めるよ。
それ以外の子は、自習だね。 授業の邪魔にならないように声や音は小さくね」
当然だけど、私は自習だ、横の女の子ステラちゃんは……前の席に行ってしまった前後左右だれも居ない。 ステラちゃん、試験の結果は良かったのでは?
ざっと見て、半数以上の生徒は初等教育を最初から受けるようだね。
残った子は、自習を始めたけど、早速始まった。
「さて、何人かはノートもペンもインクの用意も無いようだけど、勉強する気あるのかな?
入学準備に5日間も有った間、君たちは何をしていたのかな?
授業を進めるけど、ノートを取れなくて付いてこれなくても僕は何もしないよ」
うん、やっばり何人かは準備が出来てなかった。
顔を下に向けてじっとしている。
セン先生は優しい顔をしているけど、言葉は辛辣になっている。
「ふん、遊びで魔法学校に来てんじゃねぇよ」
例の男の子が、小さく愚痴る。
まぁ、そうなんだけどね、領主からお金を出して貰い、生活する場所も提供して貰って、学ぶ場所を用意して貰っている。
何を望まれてここに来ているのか、町や村を出るときにクドいぐらい説明されていたはずだけど。
「さて、授業を始める前に、他の組に付いても話しておこうかな。
1組は、初等教育・中等教育が終わっていて、魔法が使える子達だ、今日からは基礎魔法に必要な授業と実習を始め居てるね。
2組は、初等教育・中等教育が終わっていて、魔法が使えない子達だ、基礎魔法の授業と魔法を使うたための実習を始めている。
さて、きみたち3組だけど、初等教育・中等教育から始める、これだけで1組と2組からどれだけ遅れているのか判るかな。
君たちは、1組と2組の生徒に追いつかないといけない」
死に物狂いで勉強しないと、1年目を終わる前に退学することになってしまう。
危機感をどれだけ持てるかになってしまうし、勉強の素質も影響される。
「さ、では授業を始めるよ」
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