第175話 追憶「収納空間」
私が巨人と相打ちになった?
えーっと、あ、そうか自分自身を収納空間に収納したから、左腕と右足を残して体は行方不明、普通は死んだと判断するよね。
自分を収納した記憶が無いから、想像だけど。
「でも、何で私はダンジョンから出てきたんですか?」
「いや、それは俺たちが知りたいんだが」
私の疑問にジョムさんが呆れたように言う。
んー、ん?
いや、まさかね。
でも、推測だけど一応筋は通っている。
「推測になりますが、自然発生するダンジョンは、時空魔法が使える生物が死んだ時に発生すると考えられませんか?
ただ、過去に時空魔法使いや時空魔術師が亡くなった時にダンジョンが発生した記録はありません。
なので、なにか要因があると思うのですが。
可能性としては、収納空間を現実空間と繋いだまま死んだとか?」
私は、ようやく泣き止んだフミとシーテさんの頭を胸に抱いて、頭を撫でながら考察を話す。
ダンジョンが収納空間という前提だ。
「でも、それではダンジョンから魔物が生まれる理由が説明できません。
下手をすれば、時空魔法を使える人が魔物を生み出すと取られかねます」
ハリスさんが魔物についての疑問を言う。
うん、当然だろうな。
「それも、想像でしかないですが、魔物の居る空間とも繋がってしまう。
つまり、魔物の居る世界とこの世界を繋ぐトンネルのような役割を果たしてしまう、と考えるとある程度の辻褄が合います。
全て仮定で確証は全く無いですけど」
私は苦笑いをする。
これは、完全に空想だ。
ハリスさんが続ける。
「では、北のダンジョン、マイさんが出てきたダンジョンが魔物を生まなかったのは?」
どういうことだろう?
「えっと、私が出てきたというダンジョンは何時発生したんですか?
大きさとか。 踏破はしたんですか?」
てっきり、私が出てくる時に発生したんだと思った。
「うむ。 マイ君の戦いが終わって暫くして発生した。
1層目が直径3メートルの500メートルの洞窟。 2層目が20室に及ぶ部屋がある高さ3メートル程度の広い空間だった。 大きなダンジョンだったな。
そして、ダンジョンからの影響が全く無く、また、魔物も発生しなかった。
ダンジョンコアも見つからなかった。
有ったのは、ゴミ同然の軍の装備品が少しだ。
入口を封鎖して、様子を見ていたが、変化は無かったそうだ。
変化があったのは、マイが出てくる前、シーテが探索魔術でダンジョンの中を探索した時だな。
マイが出てきた後に消滅した」
うーん、2年間もダンジョンが魔物を発生せずに存在して、私が出てきて消滅した?
あ、シーテさんが私に探索魔術を使っている。
「シーテさん?」
「マイちゃんから、微かだけどダンジョンコアの反応がある」
え?
自分自身に探索魔術を行使する。あ、本当に私の胸の中央にダンジョンコアの反応がある、魔石かな?
「魔石でしょうか? がダンジョンコア化しているのかな?」
反応は本当に微弱だ、私の胸に触れていないと探知するのは難しいだろう。
ふと思い出して、自分の収納空間の中を確認してみる、忘れてたよ。
「ああああ! 私の収納空間の中身が空っぽになってる!」
私の声に、フミとシーテさんがビクッと驚く。
「ああ、なるほど、ダンジョンから出てきたのはマイさんが収納していた物ですか」
ブラウンさんが納得する。
そうだ、あの戦いの時、戦闘に必要な物以外は全て取り出して置いた。
そして、ほとんどの武器を使い果たした、残っていたのは、戦いの最中に収納したオーガの武器と捨てる方法が見つからず昔から死蔵していた軍の廃棄品だけだ。
いや、魔物が発生しなかった理由、そっちも問題だ。
「魔物を生まなかった理由としては、私が収納空間に入っていて、死んでいなかったから?
もう完全に空想に空想ですが、私が居たことで収納空間とダンジョンが制御されていたと。
私が魔物の居る世界に繋げる事は無いので、ダンジョンの影響が出なかった、魔物もダンジョンを通って出てこなかった?
つまり、収納空間が現実空間と繋がったまま、時空魔法を制御している人か獣が死んで、制御を失った状態が原因で魔物の居る世界とも繋がってしまう?」
「一応、スジは通っているわね。
でも、マイちゃん、自分自身を収納するなんて、なんでそんな無謀なことをしたの?」
シーテさんが考え込んでいる。
でも、時空魔法を使う者が自分自身を収納するのは禁忌で有ることをよく知っているなぁ。
「自分自身を収納したのは、正直、覚えていません。
でも、よく知っていましたね、自分自身を収納するのがタブーなの」
「ちょっと時空魔法について調べたからね」
シーテさんの声に力が戻ってきている。
何時ものシーテさんだ。
「ん? なんでタブーなの?」
フミが聞いてくる、うん、普通の人は知らないよね。
「それはね、フミちゃん。 自分自身を収納した時空魔法を使う人が戻ってきた記録が一つも無いからよ」
「マイ!」
フミが私を抱きしめる。
また震えだしてしまった、ごめん。
それに、自分自身を収納するのを何度も行っていることを話していなかった、話すべきかな?
「フミさん、瀕死の状態での判断です、
責められません、それにソレが結果的に生きて戻れる事に繋がったのです。
でも、マイさん、自分自身を収納するような危険な事はもうしないで下さい」
「あ、はい。 判りました」
すいません、ハリスさん。 便利に使っています。
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