第11章 戦い

第136話 戦「暖かい雨」

 雨が降る。


 雨の年が始まって、本格的に雨が数日降り続ける事が増えてきた。


 んでだね。


 私、マイは領軍の視察団のチームと北の村に発生し消滅しない黒い雫と上位種の魔物を討伐した。

 戦いの中で私の奥の手の一つ時空転移を見せてしまった。

 視察団のチームのリーダー ギムさんはこの事を可能な限り内密にしてくれると言ってくれたけど、転移の魔術を使える魔術師は現在確認されていない。

 この情報を隠しておくのには限界が有ると思う。


 と、現実逃避しているのは、デジャブというかまぁ、はい、再びフミに介護されています。


 疲れているだけなのだけど、問答無用で介護されている様子を見る視察団のチームの皆さんの生暖かい眼差しが辛いです。


 今は、部屋着でベッドにノンビリ座っていて、向の椅子にはシーテさんが居る。

 私の部屋に軟禁状態ですよ。


 ぐったりしている様子を見て、苦笑している。


「はいはい、マイちゃん諦めが肝心よ。

 私もアーンしたいな」


「シーテさん、勘弁してください」


 色々大切な物を失ってしまった気がします。

 トホホと肩を落とす。


「うふふ、フミちゃんに嫌われるからやらないわよ。

 でも、確認するけど体の方はもう大丈夫なのね」


「はい、もう回復しています」


 私は、しっかりと頷いて問題ないことを示す。


「あの魔術の影響が心配だったんだけど、大丈夫そうね」


「ええ、一気にある程度の魔力を消費するので、その反動が大きいだけで魔力消費量自体は危険なほど消費しませんから」


「その瞬間消費量? が問題なんだけどな」


「そこは注意していました。 とはいえ、確認している範囲でのギリギリだったのはそうですね問題でしたね」


 あの魔術とは、時空転移の事、転移として伝えているけど不特定の人に知られた場合の危険が大きい。

 なので、聞かれる可能性を考慮して、あの魔術と言うことに申し合わせたんだ。


 魔術師が魔術を使う上で気を付けないといけない事に、限界まで魔術を行使してはいけないというのがある。

 自分の魔力量を超えて使用した場合、意識を失う。 場合によっては2度と目を覚ますことが無い。

 また、私の場合のように一気に魔力を消費する場合も問題になる、軽ければ頭痛で済むけど酷ければ精神にも影響が及ぶ。

 魔術は、その技術において使用者の限界以上の威力を引き出してしまえる。

 だからこそ、魔術は使う上で細心の注意が必要で、その危険を管理する必要がある。


 魔法使いは、その心配は少ない。

 魔力を使う上で、限界を超えないように無意識に使うのを止める。

 もちろん、意思の力で無理矢理 限界を超えることは可能だけど、普通に使う分には危険は少ない。


「じゃ、ギムからの報告ね。

 今回の戦いでの死者は4名、魔物の規模からすれば少なすぎるわ。

 北の村から逃げる途中で戦いに巻き込まれた人が2名で、戦闘中に魔物に囲まれて逃げ切れなかった人が2名。

 戦い以外では、北の村に居た住民が24人、これは確認出来た数。 多分もっと増えるわね、行方不明になっている人がそれなりに居るわ。

 これが第一報。

 戦いの後、直ぐに馬を出して確認に言った守衛からの報告ね」


 そうか、軍人だった自分としては、これは十分な結果だと判断している。

 でもやはり、死者が出ていることに対して、自分の力の足りなさを痛感する。

 私は万能じゃ無いし、むしろ戦闘に不向きな時空魔術師だ、私が上手く立ち回れたら、などと自惚れるつもりはないけど、それでも、何か出来たのではと考えてしまう。


 私が黙っていると、シーテさんが続けて話し始めた。


「続きだけど、北の村の建物なんかの被害は少なかったみたい、火事があったけど小規模なのと雨で直ぐに鎮火したのも大きいね。

 畑はかなり駄目になったみたいでけど、被害としてはそれだけかな」


 それは良い情報だね。

 北の村の人達は戻ることが出来る。 帰れるんだ。


「シーテさん、魔物の残りとか安全の確保はどうなっていますか?」


「それね、町長は北の村の復興を決定したわ。

 その復興の前段階として、事前調査が計画されてるの。

 コウの町だと私とマイちゃんだけが探索魔術を使えるわ、だから私達が回復したら、また北の村に行くことになるの。

 今度は、魔物の残りの討伐と黒い雫やダンジョンの痕跡の調査ね」


 うん、この展開は予想していなかったかな?

 でも、北の村の安全を確保しないことには住民が戻ることが出来なし、戻れるなら早いほうが良い。


「探索範囲が広くなりそうですね。

 どれだけの日数が必要になるのでしょう? コウの町の守りも気になりますし」


「視察団とマイちゃんをコウの町から離すのは、抵抗が大きかったわ。

 だから、北の村に行くのも最低限になる予定、戦闘は全部 他の冒険者と守衛に任せる形ね」


 詳しく聞いてみると、私とシーテさんを中心とした2組で馬を使って探索魔術を行使しながら移動。

 北の村の周辺を一気に確認した後、村の中の安全を確認する流れとのこと。


「うーん、これも町長からの指名依頼なのですね。

 断る選択は無いので、了解しました」


 何度も出ているけど、管理・支配階級からの依頼は事実上の命令と同じ。

 断ることは出来ない。


 でも、またフミを不安にさせてしまうかなぁ。

 ここ数回、大丈夫と言って出かける度に何か戦いになってしまっていたから。






 運が無いのかなぁ。

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