私の心は貴方のおかげでどんなに救われたことか
ゲームでサブキャラとして登場していたエレノアさん。
個性的なキャラで物語を盛り上げるちょい脇役と思ってるんだけど……、最近になってエレノアさんの発言が意味深だったり何かを捉えている発言が目立ってるんだよね。
「クロエ様、エレノアさんって何者?」
今日一日の授業が終わり、寮に戻る途中、一緒に帰っていたクロエ様に聞いてみる。
「ああ……そっか。ソフィア様は知らないんでしたね。あの方の正体を」
「正体?」
「……軽くでしたらお話出来ます。エレノアさんはあなたの本当の両親が創り上げた人工的な妖精です」
「…………え」
「本来の名はゼロ。帝国の紋章と関わりがある妖精です」
「かか……わり……」
衝撃的な事実を聞いてしまった。
もっと詳しく聞きたいところだけど、もうそろそろ寮につく。
どうしよう……このままどこかで静かな場所に行って聞き出すのも手かもしれないけど、今日はアイリスが実家に帰っちゃうからなるべく早めに寮に戻りたい。
「……また、後日お話出来たら、色々と教えますよ」
私が悩んでることに気付いたクロエ様は優しく笑った。
「そうしてくれると嬉しい。ありがとうございます」
口角を上げ、微笑むとクロエ様は切なそうに微笑む。
私はその切なそうな理由は分からないけど、クロエ様にはクロエ様の悩みとか色々あるんだろうな。
なんだか私だけ悩みとか聞いてもらって申し訳ない。
「あっ、あの!!? クロエ様は悩みとかありますか? なんだか私ばっかり悩みとか相談を沢山している気がして」
「……悩み。そうですね、悩みとまでは言いませんが、野望……ならば」
「野望?」
「ソフィア様が幸せになってくださるという野望です。その為なら何だって出来る」
「…………クロエ様はゲームキャラの悪役令嬢とは違う性格な私を知ってても尚、そんなことを言ってくださるのですね」
「ゲームの悪役令嬢はゲームの悪役令嬢しか居ません。あなたもあなたしか居ない。代わりはいないし、性格は違えど推しなのは変わりない。それに可愛らしい悪役令嬢が見られて満足なんですよ。転生者だからこそ、この先の未来を知っているからこそ、……あなたには幸せになってもらいたいと」
「どうして」
「……前にも言いましたが、ソフィア様は推しですので。一番、大切な人ですよーーそれなのに、頼ってほしいと願うのにあなたは守らせてくれないんですね」
……あっ。
違う。私はこれでもかってぐらい頼ってるつもりだった。
でもクロエ様はそう思ってはいなかった。
「では、失礼しますね」
クロエ様は人差し指を口に当て、軽く笑う。
一礼すると、男子寮の方に向かっていった。
「あ……の……、私はクロエ様が転生者で良かったと思ってます」
言わないと。
私は普通に話す声量よりも少し大きめに話し出すと、クロエ様は振り向き驚いた表情で私を見た。
「ずっと心細くて、相談出来す人もいなくて……私、バカだから何度もフラグを回収しちゃって……次にどうするべきなのかも判断ミスを沢山してて、そんな時にクロエ様が転生者だとわかって……どんなに励みになってきたことか」
そう、クロエ様は迷わずに自分が転生者だとうち明かしてくれたおかげで私は救われた部分が沢山ある。
「クロエ様は守らせてもらえないと思ってても私は……私の心は貴方のおかげでどんなに救われてきたことかーーありがとうございます」
軽くお辞儀をして、クロエ様を見ると泣きそうな顔になっていたけど嬉しそうに笑い、一礼して身を翻して歩き出した。
クロエ様の背中を見送りながら、クロエ様が言っていたことを思い出していた。
代わりはいない……か。ゲームの悪役令嬢とは違う性格なのに、それでも推しだと言ってくれる。
クロエ様はどんな気持ちで転生したんだろうか。
私が転生したのだと気付いた時は絶望と孤独感があった。でも前世での孤独に比べたらまだマシな方だと思ってた。
でもクロエ様は声優で、これからもっと人気者になるはずなのに死んでしまった。前世に未練はないのだろうか……。
私は深い息を吐き、寮に入った。
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