第17話飛行場

「了解、大丈夫?」

小妹は真剣な顔をして返事をした。

「車で飛行場の往復だから大丈夫だよ、

それに僕にはこのピストルがある」

亮はインスリン銃を手に取った

「うふふ、亮のお気に入りだ」

小妹はうれしそうに笑った。


「尚子さん、ジャネットとMIYABIからスタッフの

弁当を運んでください」

客席の出口に亮が立つとモニカが客席から

車のキーを持って追ってきた。

「待って亮、乗せていくわ。

スティーブを迎えに行かなくちゃ」


「ああ、助かります」

二人が乗った車が地下の駐車場から出てくると

外にいたジャック・チョウの部下の車が後を付けた。

「モニカ、スゲー200系トヨタランドクルーザーだ

 北米仕様5.7ℓ 386馬力 トルク55.4kg」

「うふふ、良い車だわ。私亮に会った時から

すっかり日本通になってしまったの」


「新型の300系は5年待ちだそうです」

「ああ、欲しい!」

亮は子供のように社内をキョロキョロと見渡たした。

「亮、やっと二人きりになれたね」

モニカは助手席の亮の方を向いてうれしそうに言った


「ああ、そうですね」

「気の無い返事ね」

「別にそう言う訳じゃないけど、

君にはスティーブがいるし僕にも」

「そうか、日本人は遠慮深いのね。私の事嫌い?」


「いや、好きですよ」

「よかった」

モニカが嬉しそうに笑うと亮が真剣な顔をして言った。

「浮気はダメですよ」


「うふふ、そうすると亮はファッションと

レントランと冷凍食品をやるの忙しいわね」

「別に好きな事ですから大丈夫です」

モニカは亮の収入を密かに数えて笑っていた。


「亮給料いくら貰っているの?」

「50000ドルくらい」

「うーん、妥当な線ね」

亮は納得したモニカに年収

だとは言えなかった。


そもそも亮の収入はアメリカでの株の収入とは

別にナチュラル・グリル、Ⅾ&R、

アメリカンウェブの役員報酬は

全て株に変えていたので収入は株配当のみで

あって実際も収入は少なかった。


二人がJFケネディ空港に着くと千沙子の

乗った飛行機の到着時間を確認した。

「モニカ日本からの飛行機は

1時間遅れの17時25分到着だ!」

亮は到着時間が気になって言った


「私の方は定時の18時5分到着よ」

「モニカシンディに1時間遅れると

伝えてください」

「そうね。先にメイクをしてもらうように

 お願いしておくわ」

「すみません」


亮がモニカに礼を言って頭を下げると

「團さん!」

亮は自分の名を呼んだ声で振り返った。

「樫村さん?」

「はい、お疲れ様です」

「どうしたんですか?」

「一文字の部下がこっちへ向っている

情報が入ったので、ここで張っているんです」


「部下?」

「はい、今はストレートHDの社長の磯村です」

「ああ、そうですか。磯村が社長になったんですか」

「はい、3ヶ月前に一文字の逮捕劇があったもので

その時に」


「じゃあ、16時25分着予定の?」

「そうです。1時間遅れていますけどね」

「團さんの方は?」

「日本から姉が衣装を持ってくるので迎えに」

「そうか、同じ飛行機か」

樫村は時刻表を見上げた。


「そう言えば、團さんは原警視と

同級生だそうですね」

「はい、同級生と言っても学部が違いますから

 テニス以外は交流がありませんでしたけど」

「そうですか・・・」

樫村はそれを聞いて何となく嬉しかった。


「そうですか。原警視はキャリアなのに

全然偉そうにしていないんです」

「いいじゃないですか。いい人で」

「いや、困るんです。いい人じゃ」

「はいっ?どうしてですか」


「私、原警視に出世していただきたいんです」

樫村は力を入れて話しをした

「原警視には日本の警察機構を変えて欲しいんです」

「樫村さんだって充分変えられますよ

原さんに随行してFBIに来られるなんて

エリートじゃないですか語学は堪能だし」


「いや、いや私もそれなりに努力をしているんですが、

所詮準キャリですから 

原警視を押し上げていく事にしました」

「諦めるのが早いんですね」

「團さんは警察機構がわからないからです、

警察は階級制です。原警視は27歳で警視、

私は33歳で警部ですから」


「なるほど、そんなに出世のスピードが違うんですね」

「はい、今回FBIに来て日本の

警察機構が遅れているのがわかりました」

目を伏して話す樫村の表情を見ていた亮は

樫村が美咲に好意を寄せているのがわかった。


「樫村さんがんばってください、出来るだけ協力

 します」

亮は別な意味で言葉をかけた

「はい、ありがとうございます」

生真面目な樫村は深々と頭を下げていた

「でも、困りました」

亮は出国口を見て言った。


「何でしょうか?」

「磯村は僕の顔を知っているはずです」

「そ、そうですね」


モニカが樫村と日本語で話をしている

亮の困った顔を覗き込んで聞いた。

「どうしたの?」

「会いたくない人が同じ飛行機に乗っているようです」

「そう、じゃあ変装しなくちゃ」

モニカは自分のしていたサングラスを亮に

掛けて笑った。


「似合うわ。亮。素敵」

うれしそうに亮の顔を見つめた

「これじゃ、サングラスをかけただけですよ」

「ううん、私が一緒にいれば私のほうに目が来て

 亮に気づかないわ」


「なるほど、ドラマみたいですね」

「うふふ、アメリカはそんなドラマが多いのよ。

スーパーマンなんかメガネをするだけで

クラーク・ケントなんだから」


「わかりました。試しましょう」

亮はサングラスをモニカに返すと

一緒に空港のお店に行って

サングラスと帽子を選んだ。


「亮、なかなか似合うじゃない」

「はい、モニカの言う通り誰も僕の方を見ないですね」

「そりゃ私は見せるのが商売だから、

人の目を引くのは得意よ」

「なるほどさすがプロだ」


だが亮とモニカの二人の姿を

柱の陰で見ている二人の男がいた。


その時、17時20分に東京からの

到着のランプが着いた

「あっ」

そう言って亮が急に走り出した。


モニカは驚いて何も言えずに

亮を目で追いかけると

白い服を着た黒人のところへ

早歩きで近づいていった

「どうしたのかしら?」

モニカは不思議そうな顔をしていた。


亮は樫村の前を横切りざまに

手で合図を送り樫村はその手を見て

前に居る黒人に目をやった

亮は黒人の脇に立つといきなり

大声で怒鳴った。


「僕のスマフォ知らないか?」

「何?」

「僕の携帯知らないかと言っているんだ!!」

男は亮の顔を見て逃げようとすると

亮は男の右手をつかみ背中に背負って

床に叩きつけた。


そこへ樫村が来て男の腕を掴んで背中に回した。

警備員二人が騒ぎを見て走って駆けつけると

亮が倒れた男を指差した


「この男が先日捕まった両替金の

引たくりの仲間です」

「わかりました」

警備員は男の両手をつかみ上げ

警備員室へ連れて行った

「あはは、やりましたね」

樫村が亮の肩を叩いた。

「はい、あの男ともみ合って

スマフォを無くしたんです」

「ああ、あの時ですか」


「はい」

亮は日本に帰って自分が生きている事を

知らせなければならない人が

たくさんいるのに連絡が取れなくなる人が

居ると思うと落ち込んでいた


~~~~~~~~~

亮が一瞬で黒人を倒す技を見ていた

ジャック・チョウの部下は血の気が引いた。

「あの日本人やはり強いぞ」

「ああ、いざとなったら」

二人とも胸のピストルに触れた


モニカと樫村は到着口を次々に出口で出てくる人間を

見ている中、亮は少し後に立っていた

そこに、出てきた磯村を発見して

樫村は亮に合図を送って後を付けた


「原警視、磯村が今着きました。追跡します」

「ご苦労様です」

「ああ、衣装が届くそうで、團さんと会いました」

「そうですか」

美咲はライブに行きたかった

「それから、先日團さんが取り逃がした

ひったくりを空港で捕まえました」


「本当、すごいお手柄ね」

「はい、ありがとうございます。原警視は今?」

「一文字が泊まっている。ホテルヒルトンにいます」

「たぶん、そちらに向うと思います」

「はい」

磯村はタクシーに乗りその後を

樫村がタクシーで後を付けた

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