第2話 王太子に婚約破棄されて大喜びしましたが、ぬか喜びにならないか心配になりました

ウッソーーー、この能天気で、馬鹿な浮気男と別れられるの!本当に!



「ヤッターーーー。バンザーイ」

私は喜びのあまり飛び上がっていた・・・・・・・・・。






そして・・・・やってしまったことに気付いた。


私は固まってしまった。



でも、私を見ていた皆も唖然として私を見ている。


そらあそうだろう。見目麗しい王太子殿下は婚約したい人ナンバーワンなんだそうだ。クラスメートの級友たちにも散々言われていた。出来損ないのあんたには勿体ないと・・・・。

本来ならば、婚約破棄されたら、泣いて許しを乞うところらしい。


でも、私から見たら、ベルンハルトは婚約者の私のことは見向きもしない、女遊びの激しい、結婚した後は隠し子が一杯出来そうな、超不良物件なのだ。これに比べたら生意気で意地悪なフェルの方が何倍もましだ。私としてはさっさと婚約解消したかった。



しかし、私とベルンハルトの婚約は前国王陛下と私の祖父の前辺境伯が私達が生まれた時に決めたことなのだ。の肝いりで決まった婚約なので私は諦めていたのだ。政略結婚は貴族としては当然の事で、多少のことは目をつむるしか無いだろうと、諦めていたのだ。


それをまさか向こうから婚約破棄してくれるとは思ってもいなかった。


こんな幸運が、いや、正月とクリスマスとお誕生日が手を携えてやってくるような幸運が信じられようか?


私はスキップして踊り出したい気分だった。


「でも、待てよ。こんな私にとって都合の良いことが、果たして本当に許されるのだろうか?」

そう呟いて私ははたと止まってしまった。



何しろ言っているのが、あのいい加減なベルンハルトなのだ。


こんなの陛下とかが出てきて、ベルンハルトが怒られておしまいなのではないだろうか?


そうだ、そうに違いない!


私はがっかりして椅子にへたり込んだ。

喜びが激しかった分、落ち込みも激しかった。


それを見てベルンハルトは勘違いしたみたいだ。喜びに満ちた目で見てきた。



「そうか、やっと現実が判ったのか」

嬉々として言っている。


こいつは本当に馬鹿だ。


そう、お前が陛下にしばかれる未来が見えたんだよ。

そう余程言ってやろうかと思ったが、面倒くさくなって黙っていた。

というか、私は日頃は大人しくしていた。


兄には、

「お前は静かに座っていれば、まだ、見るに値する」

姉にも

「あんたは、静かに大人しくしていれば、絶対に貴族の令嬢に見えるから」


何かふたりともとんでもないこと言われているような気がするんだけれど。

私の責任で婚約破棄をされるのもまずいので、できるだけ口数少なくおしとやかにしていたつもりだった。だから、王太子も絶対に私が反論するなんて思ってもいないはずだ・・・・多分・・・・



「そう、エルヴィーラ。貴様、配下の者を使ってアマーリエにしたいじめの数々、思い当たるものもあろう」

ベルンハルトは上から目線で言ってきた。


こいつ何を言っているんだろう?


私がやられていた方なのに、どう調べてそうなったんだろう?私はこの国の将来を危ぶんだ。




「アマーリエは、変なうわさ話を流されたり、教科書を破られたり、していたそうだ。挙句の果てにこいつはアマーリエを大階段から突き落とそうとしたそうではないか」

ベルンハルトは嬉々として例を述べていた。全部私がされたことだ。


教科書を隠されるなんて可愛いもので、教科書に落書きされる、ペンが無くなる。大切な課題を書いたものを池の上に浮かべられる等々、もう散々だった。


そして、極めつけは、大階段の上から降りるときにお金を見つけた時だ。ラッキーと思い私はそれを拾おうとかがみ込んだのだ。その時、横を何故かアマーリエが転がり落ちて行ったのだが・・・・そのせいでお金を拾えなかった。高々銅貨一枚だったが、銅貨一枚で何か買えるかもしれない。一銭を蔑むもの、一銭に泣くのだ。


私は慌ててアマーリエに駆け寄ってあげたのに。


「あんた一体何すんのよ!」

とのたまったアマーリエを私は呆れて何も言えなかった。だってどう考えても自分で落ちて行ったのに!

それを助けに駆け寄ってあげたのに、人のせいにするなんてどう言うこと?

私には意味が判らなかった。


そんな事があったのを思い出していた。


でも、待てよ。ひょっとしてコイツラ私を冤罪にかけようとしている? 


ええええ! 嘘!


これひょっとして小説ではやっている婚約破棄の断罪劇ではないの!


嘘ーーーー!


薄幸の少女で出来損ないと皆に虐められていた、悲劇のヒロインの私が、最後のトドメをと、悪役令嬢に、やったとも無い無実の罪を捏造されて断罪される場面なのね。



私はめっちゃ興奮してきた。


まさか、私が、出来損ないの私が、そんな断罪劇のヒロインになれるなんて!




私はまた、テンションマックスに上がっていたのだ。


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