4月27日(水)12:50

「ちょっと思ったんだけどさ。四月一日くん自身にはそういう、横文字みたいなあだ名ないの?」

「八木沼さん何言ってんの」

「いやだって。周囲の人間にいろいろ名前付けてるなら、普通自分にも付けてるんじゃないの」

「……普通ってなんだっけ」




 昨日の話題をわざわざ蒸し返してしまったのは申し訳ないと思っている。でも部活が終わって家に帰って落ち着いたら、なんか唐突に気になりだしてしまったんだよ。フィルフィエールだとかアルフィーだとか、そんな凝った名前をいろいろ考えておいて、自分の分だけは考えてないなんてことがあるだろうか。むしろ、自分の名前こそ真っ先に考えているのでは。




「あ、えっと……」

「おい。なに急にもじもじしてんだ四月一日。まさかマジであるのか」

「……カミール。職業は剣士だ」

「おっとまさかの職業持ち」




 四月一日くんはちょっただけ恥ずかしがるそぶりを見せたけど、すぐにキリッとしてカミールと名乗った。そして職業は剣士ってRPGかよ。いやまあ、魔王を倒したいみたいだし、世界観としては合ってるけども。




「ちなみにアルフィーは騎士で、フィフィーはヒーラーだ」

「知らねーよ」

「うん。あだ名だけじゃなくて職業の設定まであったとは予想外だった」




 しかしヒーラーというのは悪くない。仲間のステータスを常に把握し、パーティーが全滅しないよう状況を管理する。生きるか死ぬか、全てはヒーラーの手のひらの上。つまり裏の支配者。なかなかかっこいいではないか。え、そういうんじゃない?




「つーか、剣士と騎士って何が違うんだ。どっちも剣使ってるし一緒じゃね?」

「いや、役割が違う。俺は攻撃特化型。お前は攻守バランス型だ」

「ああ、確かに騎士といえばナイトのことだし、お姫様守ってるイメージあるよね」

「へー」

「うわ、五十嵐くん聞いたわりに心底興味なさそう」






 隣の席の四月一日くんはどうやら職業が剣士らしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る