第39話 背理法って使い方次第では万能な希ガス



 拝啓、前世の両親へ。自分は割と正論を突きつけるタイプだと思っていましたが、実際はそうではなかった様です。正論パンチ怖いです。








              敬具


              フルール・ヤマト・ジャポニカ






















 突然だが、私が一番効率の良いと思っている勉強法は何だと思う?


 ひたすら反復練習、テストをしながら勉強する、どれも良いやり方だが、私が強くオススメしたいのは、他人に勉強を教える事だ。


 人に教えるという事は、他人に分かり易く説明する必要がある。教科書の内容を一回自分の頭で噛み砕き、それを説明する過程で自分の理解をさらに深める事ができ尚且つ、相手は勉強を教えて貰ってる。とてもWin Winな関係ではないか。


 まあ、私は人に教えた事あるの鈴しかいないけど…ボッチだったんだよ!察せ!




 とまあ、何故この様な事を言っているのかと言うと。






 「いい、みぃちゃん。この様な証明はね、まず背理法を使うのがセオリーなの。問題は『√2が無理数だということを証明せよ』つまり、√2が有理数であると仮定して、それが矛盾すれば、√2が無理数だと証明できるのよ」




 「リリーちゃんの説明を元に、問題に照らし合わせると√2=n/m(n,mは互いに素)というを証明し、矛盾すれば証明完了と言うわけだよ。


 まず、両辺を二乗して2=(n,m)^2、式を綺麗にすると2m^2=n^2。この式からnは偶数だと言える。よってn=2k(kは自然数)ともおける。」




 「それで、フルールの言っていた式に代入すると、2m^2=4k^2,つまりm^2=2k^2。これによって、mは偶数だと分かる。


 よって、n,mが互いに偶数であるのでn,mは互いに素であるという最初の仮定に矛盾してる。つまり、√2は無理数である。ほら簡単に証明できたでしょ。この手の問題はいかに量をこなし、慣れるのが重要だからね。初めのうちは困惑して当然だわ」




 「…一ついいですか?3人で分けて説明するって、練習とかしないと出来ない芸当ですよ。まあ学年1、2、3、位の方に教えて頂けるのは嬉しいですが。主従関係逆転してません?」




 そう、みぃちゃんことミーシャちゃんにリリーちゃん、お嬢、私が3人で数学を教えているのである。




 「いいんじゃない?ミーシャちゃん数学苦手なんでしょう?リリーちゃんの護衛として相応しい点を取ってもらわないとリリーちゃんに迷惑が掛かっちゃうから。」




 「いやでも、自分でも勉強出来ますので。というか重圧が凄いんです。勉強に集中出来ないレベルですよ、自分のお使えする王女様に他国の皇女様、そしてトップレベルの貴族家のお嬢様。私みたいな普通の伯爵家の人間としては荷が重いですよ。」




 確かにそうだね。ちょっと圧があったかもな。まあ大丈夫、これから多分学生生活このメンツで固まるから、気にしなーい気にしなーい。






 「まあ、面白さ半分、いつも剣術教えて貰ってるからちょっとでも恩返し?みたいなことしたかったのよ。いつもありがとう、みぃちゃん。」




 たらしや!たらしがおるで!!そうやって従者を労う上司、もうコロッて落ちてもおかしくないレベルですよ。




 「…殿下……」




 ミーシャちゃん目をうるうるさせて、顔を真っ赤にしちゃって。




 「聞きました?お嬢?こうやって従者を労ってください。そうすれば、従者の信頼度爆上がりですよ。」




 「はいはい、言ってなさい。ちゃんと私が満足する仕事をしたら労ってあげるから。」




 「言質取りましたからね!!やったー!!」












 「はい、今回の単元一応理解出来ました。ここからは自分で詰めていきます。本当にありがとうございました。」




 ミーシャは律儀に頭を下げた。


こういう風に感謝の気持ちを伝えていくのが、コミュニケーションの大事な部分だと私は思う。




 「いえいえ、同じクラスメイトですから、困った時はお互い様ですよ。ミーシャさん。」




 お嬢、あんたは天使や、その懐の深さに惚れてしまう!




 「…………」




 ん?どうしたんだろリリーちゃん。難しい顔して考え込んで。




 「どしたん、リリーちゃん。そんな美人な顔が勿体無い様な顔して考え込んで、相談なら乗るよ」




 決まった。これはイケメンレベル高いでしょう。いやぁ、自分の才能が怖いっすw




 「いや、背理法って最初に立てた仮定と矛盾すると証明完了になるわけでしょう。つまりさ、恋人とかのよくあるトラブルの『浮気してないのを証明してよ』っていうのに使えそうって考えていました」




 「えっと、で、殿下?」




 ほう、これは文系科目が得意だったけど、古文と漢文が死ぬ程嫌すぎて理系に行って地獄を見た私の理系力が試されますな。






 「…まずAはBと付き合っていて、Aの仲のいい友人Cに対してBが浮気を疑ってる、という状態だとしよう。問題は浮気をしてないのを証明する、だからAはCと浮気をしている、と仮定してそれが矛盾すれば証明完了ですね。


けどその為には浮気の定義を決める必要があります。」




 「浮気指数(α)を作れば良さそうですね。Bが浮気だと思う行動に点数をつけて、行動毎に掛け算して、浮気ボーダーを作ってそれを越えれば浮気になるのでは?」




 「α>100の場合浮気だとしましょう。


 例えばB以外の女性とサシで外出した場合+4みたいな感じで点数をつけると言うことですか?


 いやけど、その場合Bが『Aが私以外の女性を見たx1000』なんか定義しちゃえば、殆ど浮気になっちゃいません?万人的に受け入れてられるやつじゃないと定義として成り立たないんじゃない?それと男性目線と女性目線でも浮気の判定は違うじゃないですか、その場合にも対応できませんが。」




 「フルール、もういっそのことCは既に死んでいたとか実はCが男だったとかなら簡単に証明できるけど」




 「それじゃあダメなんです。この質問をされて困っている人はいる筈です。その人を救うにはこの証明をするしかないのですよ。」




 「その場合はサンプルを沢山取るために沢山の人にアンケートをとって当てはめるしか無さそうな感じになるのだけど。」




 「結果が収束するまでアンケートを取れば当てはめれるでしょう。広い世代に男女両方に取れば数値化は容易いでしょう。これは行けますよ。カップルの修羅場を回避するためのツールが出来ますよ!」




 「あの〜、素人質問で恐縮ですが…浮気を疑われる方が悪いと思うんですが…それになんでこんなに御三方は熱くなってるんですか?」




 うっ!来た、恐怖の質問、素人質問で恐縮ですが。ミーシャちゃんエグいて。




 「ッスー、リリーちゃん答えられる?それ言われちゃおしまいなんですが…」




 「ごめんなさい、私達の理論は完全ではなかった様ですね。」




 あゝ、夏の甲子園で負けた時の様な気持ちだ。行ったことないけど…この終わっちまった感、なんとも饒舌し難い気持ちだ。






 「いい、ミーシャさん。それはね、そこにロマンがあるからよ。ロマンを追い求めなくなった時点で人はもう終わりなの。求めて続ける限りその先は掛け替えの無いほどの達成感があるのよ」






 お嬢、お嬢、あんたはやっぱり大物や。私達に答えられないことを平然と答えるッそこにシビれる!あこがれるゥ!






 「え?でもロマンや達成感じゃ飯は食えませんけど…」




 ぁ、こう心にグサッときた。この歳にまでなって大和のロマンを追い求めてる私にとってはきつい。




 「フンッ、予想外だぜ…」




 ガ○アーー!!ではなくお嬢ー!!






 結局、お嬢は3日間は立ち直ることができず、落ち込み続けていた。


 ミーシャちゃんの正論パンチ怖いzoy!



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これらの理論は私のくそ雑魚頭で考えたものなのでここは違う!って方は是非感想にお書きください





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