第7話-プロローグ編-??side
とある城の謁見室。
玉座に座る男に、1人の男が頭を垂れていた
床には片膝を付き、羽織っている綺麗な白のマントすらも床に付け最上位の礼を取る。そんな男を眺め、玉座に座る男、皇帝は小さく息を吐く。
「堅苦しいのはやめてくれ。親友に恭しくされたら気が滅入ってしまう」
「…それもそうだな。悪かった」
皇帝の意見に意を唱える事はなく、すぐに姿勢を戻し男は皇帝へ視線を向けた。男が騎士団の団長であり、信頼しているから…と言うよりはただ単に友だから非礼が許されているのかもしれない。
いや、まぁ多少なりとも信頼はされている。と思いたい。何せ長い付き合いになるのだから。
「で?俺を呼んだのは討伐の件か?」
「あぁ…って、すぐに本題に入るのはお前の悪いクセだな。相変わらずせっかちなもんだ。
女にモテないぞ?」
「その首羽落とすぞ」
「その前にお前の首が飛ぶんじゃないか?」
一触即発…とはならず、会話は物騒だが何故か雰囲気だけは和気藹々。終いには互いに顔を見合わせ爆笑する始末。もはや軽口を叩くのは日常茶飯事である。
皇帝を崇拝している奴らからしたら失神ものかもしれないが、まぁ良しとしようか。どうせ此処には俺たちしか居ないのだから。
「そう言えばあの《娘》はどうしてる?元気にしてるのか?」
「あの娘…?あぁ、例の《聖女》か。さぁな、それは俺の管轄外だぞ。
まぁ、多分生きてはいると思うが…」
「生存確認のつもりで聞いたんじゃないんだがな…。
まったく、お前と言う奴は他人に興味が持てないのか?いっときお前との縁談話が持ち上がっていただろ」
“縁談”と言うワードが皇帝から飛び出た瞬間、
無表情だった騎士団団長、セルロフはぴくりと眉を動かした。
勿論、本人も表情筋が動いた事には自覚している。
「あの娘はお気に召さなかったか。お前もそろそろ腰を落ち着けるべきだと思うが…、
好きな女はいないのか?」
「なんで皇帝であるお前と恋愛話をしないといけないんだ…やめてくれ。洒落にならん」
「友達だろ?ずっと友達だろ?親友だろ?」
うるうるとした瞳を向けて来て、一瞬「犬っころみたいな面をするな気色悪い!」と言い掛けたが、
一度、口を閉ざしその後、
つい先程の質問にたいし答えていた。
「敢えて言うなら…強い人、だな。」
どういった面で強い人なのか、心根が強く芯を持っている前向きな女性の事なのか。はたまた武力、魔力で強いタイプなのか。
問いただしたいのは山々だが…、
悲しいかな付き合いが長く、どっちの“強さ”なのかを知っている。彼、セルロフは根っからの脳筋だ
騒ぎ立てる脳筋バカではなく
静かで知的に見える脳筋バカである。
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「取り敢えずダンジョン討伐の編成はこちらに任せてくれ。実力が伴わない奴らを連れて行っても足手纏いだしな」
「はぁ…分かった。死ぬなよ」
謁見室を去る際、告げられた言葉に騎士団団長セルロフは不敵に笑み部屋を後にした。
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