第12話 夜の学校
夏休みというのは小学生にとって、一か月以上続く夢のような時間の始まりだ。ましてや一学期が終わった直後は、気分が最高潮に達するものだろう。
終業式の後、学校から帰宅した俺は友達に呼び出され、公園で意味もなく自転車を走らせたり、少人数で野球のように白球を追いかけたりした。
日が落ち始め、ボール遊びができなくなると必然的に帰り支度を始め、汗で湿った服を乾かすように自転車で疾走した。
自宅に帰ってきた後は夕食を食べ、同じく明日から夏休みの姉とテレビゲームをして遊んだりした。
*
自分の部屋に戻り壁に掛けられた時計を見ると午後十一時を回ったところだ。両親は明日の仕事に向けて既に就寝しているし、先程ゲームで連戦連勝をした際、姉はぷんぷん小言を言いながら部屋に戻っていった。
「もう二十三時か」
自室の壁に掛けられた時計は二十三時十分を指していた。窓を開けると雲に覆われていない星が綺麗に見える。遠くから犬の遠吠えがどこからともなく聞こえてくる以外、しんみりとしている。
部屋の扉を開け、廊下を確認する。両親の部屋や姉の部屋の電気は既に消えていた。
ランドセルを開けて、手探りで目当ての便箋を取り出す。一枚の便箋には丸っこい字で簡潔な一文が書かれている。
「……約束だからな。そろそろ行くか」
腕時計を念のために着けて、簡単な身支度を終えると部屋を出てゆっくりと階段を下りていく。明かりの消されてリビングに入ると棚にしまってあった懐中電灯を探し出した。スイッチを押してみると強い光が出ることが確認できた。
「これで大丈夫かな」
家族を起こさないように玄関の扉をゆっくり閉めて鍵をかける。
「……」
滅多に外出しない時間だ。寒くはないが肌は少しひんやりとして、空気も澄んでいるように感じる。深夜の通学路に向けて懐中電灯をつけた。
*
学校までの通学路には街灯が設置されていたし、空を見るとまん丸い月も出ていた。懐中電灯で足元も照らせば歩くことには困らない。
近隣の住宅では室内の明かりはほとんど消えている。普段と違う景色は気持ちをそわそわさせるが、進む足取りは自体は軽くさせる。
車が走っていない交差点の信号機が青に変わるのを待って交差点を渡り、しばらく進むと目的の学校が見えてきた。
校門の近くまで来た。見上げると真っ暗な校舎が不気味な威圧感を放っているように感じる。
「……いまさらだけど、本当に来るのかな……」
校舎を見ながら思わず不安に感じていた気持ちがこぼれた——際、校門前に小さな二つの光がこちらを見つめていることに気が付いた。
「——」
声も出ず驚いたが、意を決してゆっくり近づくと校門前には一匹の黒猫が座っていた。
目の前に来ても全く逃げるそぶりを見せない黒猫。俺の顔をしばらく見た後立ち上がり、ゆっくりと校門抜け学校に入り数メートル前でまたこちらを振り返った。
訴えるような視線につられ、俺も意を決した。ゆっくりと歩みを進め校門を抜けた際——不思議な感覚を覚えた。
「え……あれ……」
振り返り歩いてきた通学路を振り返る。先ほどまで見ていた景色が広がっている。当然だろう——けど……軽くジャンプしてみた。
「体軽くない?」
黒猫に向けて、今度は思わず声が漏れた。
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