つまり私は恋をしている

ながるさんには「海に向かって叫ぶ夢を見た」で始まり、「つまり私は恋をしている」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字程度)でお願いします。

https://shindanmaker.com/801664


 *・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*


 海に向かって叫ぶ夢を見た。

 お腹の底から、喉が痛くなるくらいに。あれは確か今年の夏に皆で行った海水浴場。夢の中では人っ子一人いない寂しい砂浜だった。

 叫んだ言葉は覚えていない。言葉ではなかったのかもしれない。ただふつふつと湧きあがる感情を追い出すように、叫んでいた。


 たまたま席替えで隣になった彼を、教科書を借りに来た彼女にふざけて紹介したのが始まり。私達と彼と彼の友達と、カラオケで、公園で、図書館で、一緒に過ごす思い出が増えていった。

 彼女が彼に惹かれていくのを傍で見て、可愛くなっていく親友が嬉しくて、あの手この手でお節介を焼く。


 とどめは夏の海で! なんて、計画通りに行きすぎて、私は共犯者たちとハイタッチしたものだ。物陰からクラッカーを手に飛び出していく。

 少し困ったような、でも幸せそうな彼女の笑顔。それを見つめる彼の優しげな瞳にどきりと胸が鳴る。恋をしている人間というのは、どうしてこんなに魅力的なんだろう。


 みんなで出かけることが少し減った。三人で会うこともまだあるけど、遠慮することも増えた。

 彼女からの相談、彼からの相談、私は力を貸した。

 仲睦まじい二人でいてほしい。でも時々、彼が眩しそうに彼女を見るときなんかに、私の心はギシギシ鳴った。親友を取られて寂しいんだろう。そう思いたかった。


 叫び声が耳にこびりついている。あの浜辺で、まだ私は叫んでいる。

 彼女を泣かせたら許さない。だから、彼が彼女を好きじゃなくなったら、この気持ちは消える。

 なんて勝手な思い。

 彼女に恋してる彼に、つまり私は恋をしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る