第8話 揺れる想い、そして目撃
私と子供達が住んでいる家を、すぐにでも処分したいとアホ旦那は言っている。
私は仕事も決まらない不安定さに加えて住むところも奪われたら、子供達とどう生きていけばいいんだろう。
本当に自分勝手な旦那に腹が立つ。
「……勝也先生に電話やメールしたい……かも」
でも、それって不倫だよね。
それはやだな。
とっくの昔から旦那の方は私を裏切っている。
本当は後ろめたく思う必要なんかない――と、思う。
籍は子供達と私の住む家のためにもまだ抜けないけど。
私は子供達に不倫しているところを見せたくない。
パパがなんで家から出ていったのか?
子供達は幼いながらも聞いちゃいけないと思っているみたいだった。
私の悲しさや憤りを感じてる。
気を遣ってる……。
私と夫の夫婦関係は完全に破綻をしていた。
とっくのとうに……。
その日は子供達が帰る前にゆっくり買い物しようと、朝早くから大型のスーパーに自転車で行った。
ちりこがのんきに晩御飯の献立を子供達の喜ぶおかずはなにかななんて考えていたら、目の前に見覚えのある男がいた。
「ああっ!」
その男は、やけに大きい背が高いだけじゃなくて骨格ががっしりとした派手な女を連れていた。
目のやり場に困るほどイチャイチャしながら、男は女の腰に手を回しもう片方の手であちこちやらしい手つきで女の体を触りまくっていた。
相手の女は買い物カートを押しながらちっとも嫌がる素振りはなくて。
むしろ自分からも、男にそこを触れだのやや小声でしかし周りに聞こえているのを楽しむかのように男に指図していた。
「……っ! ……」
男は私の夫だった。
「ちょっと! こんなとこで何やってんのよ! 恥ずかしい」
私は考える前にパッと体が動いていた。
アホ旦那の前に回り込んで胸ぐら掴んでた。
「ちりこ! 見ちゃった?」
「見ちゃったじゃないわよっ!」
まだ旦那の
そして相手は――?
「 久しぶりね。ちりこちゃん」
「まさひこ? まさひこ?」
男友達の山本まさひこが女装している。
――男だ。
男なんだ。男だったんだ。
私の夫の浮気相手は女じゃなくて男!
しかも私たちの共通の高校からの友達まさひこだった。
ガアーンッ!
ちりこはどこかに頭をぶつけたんじゃないかと思うほどのガツンと強い衝撃を受けたのだった。
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