第24話




 インゴットを1キロ用意し、それにオリハルコン変化薬と強化薬を追加して錬金術スキルで合成。

 すると、900グラムに重量が減少したのじゃ。

 次に、ヒヒイロカネ変化薬と強化薬を用意して合成。

 今度は、700グラムに重量が減少したのじゃ。


 そうやって色々と変化薬と強化薬を使って調査した所、アダマンタイトは500グラムまで減少し、ミスリルは1キロのままじゃった。

 どういう事か考えてみるのじゃ。

 まず、前に考察した時は、上位金属に変換したからじゃと考えておった。

 しかし、そう考えると、上位金属であるミスリルが変化しないのは変なのじゃ。

 そうなると、別の要因で減少しておるという事じゃ。

 ふーむ、ミスリル、オリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマンタイト、何が違うのじゃ?

 マナの伝導率?

 いや、それならオリハルコンとヒヒイロカネは変わらんのじゃから、同じ減少率の筈じゃ。

 では、何が原因なのじゃ?

 ……わからんのう……


『ちっこいの、タレ減ったからショーユとガムシロくれ』


 悩んでおったらベヤヤが窓から顔を突っ込んできたのじゃ。

 そして、首から下げておった鞄を手に、念話で醤油ポーションとガムシロップポーションを要求してきた。

 少し前に、醤油ベースのタレを作ってオーク肉を焼いた所、えらく気に入ったようで、今では自分で作って保管しておる。

 しかも、それ以外にタレに混ぜる用に木の実を砕いて炒った物や、胡椒の様な種を擂り潰した物など、自身で色々と研究しておるようなのじゃ。

 醤油ポーションとガムシロップポーションを作って、ベヤヤの様子を見ておると、器用に瓶の中身を取り出した複数の甕に入れて、木の枝を加工した棒で混ぜておる。

 そして、焚火の所に行くと、鉄串に刺してあったオーク肉に刷毛でタレを塗って炙り始める。

 本当に器用になったのう。


「ワシもお昼はオーク肉にするかのう」


『見た目同じ肉なのに、こっちは硬くてこっちは柔らかい、不思議だな』


「見た目は同じでも、部位によって硬さは違うんじゃ、好き嫌いは分かれるが、ワシはあっさり目の所が好きじゃのう」


 ベヤヤが焼き上がった肉に、豪快に齧り付いておるのを見て閃いたのじゃ。

 肉が硬いのは、筋肉の密度によるものじゃ。

 柔らかい肉は、筋肉と脂肪の層が多く、硬い肉は脂肪の層が少ない。

 それと同じで、ミスリルやオリハルコンにも密度に近いがあるのではないじゃろうか?

 早速調べたいとは思ったのじゃが、ワシの手元にあるのは、ワシが作った強化薬を使った物か、性能が若干劣る人工品。

 自然にある物とはちょっと違うのじゃ。

 得られたデータが同じ物なのか、少々疑問じゃのう。


「後でエドガー殿にちっとばかし手に入るか聞いてみるかの」


 呟きつつ、ベヤヤが焼いておる鉄串の隣にワシの分を突き刺しておくのじゃ。

 ちなみに、ワシのは肉だけではなく野菜も刺して、ねぎまの様になっておるのじゃ。




 お昼を済ませ、エドガー殿に僅かでも良いのでミスリルやオリハルコンが手に入るか尋ねてみる。

 すると、ミスリルはとにかく、オリハルコンやヒヒイロカネ、アダマンタイトは手に入れるのはほぼ不可能との返事が返って来たのじゃ。

 理由は単純で、とにかく手に入らないのじゃ。

 ヒヒイロカネは帝国の土地で僅かに採取可能らしいが、オリハルコンとアダマンタイトは自然採取では無く、ダンジョンで武具やインゴットで発見されるだけなのじゃ。

 その為、取引金額も凄まじい額になるというので、冒険者連中がこぞってダンジョンに挑む理由でもあるのじゃ。

 中には王宮などに寄贈しておる冒険者もいるらしいが、非常に稀なのじゃ。


 しかし、そうなるとオリハルコンとアダマンタイトは入手不可能じゃのう……

 入手出来ず申し訳ないと謝られたが、これは頼んだワシにも問題があったのじゃ。

 取り敢えず、ミスリルを多少で良いので入手して貰えるように頼み、代金はワシが作ったショートソードと、籠手にしてもらったのじゃ。

 エドガー殿も見事な作りで絶対に売れると言っておったので、今回は10個ほど作っておいたのじゃ。

 それとは別に、ゴッズ殿達が作った高品質ポーションがかなりの数になったので、それも納品するのじゃ。


 そして、前に言っておったポーション工場じゃが、順調に人が集まり、王城勤めの貴族が数名出資者になってくれるそうで、問題無く稼働開始が近いらしいのじゃ。

 それと、あの美容パックじゃが、なんと販売はまだかとテストして貰った女性貴族を中心にせっつかれており、どうにかコボルト豆の油を集める必要が出来たのじゃと言う。

 薬草に関しては、出資者の貴族が治める領地で、それぞれ栽培する事が決定しており、コボルト豆に関してはそこら辺に生えておるので、今は大丈夫じゃが、この調子じゃと足りるか怪しいのう。

 しかし、コボルト豆はいわば雑草。

 栽培しようなどとは誰も考えんじゃろうな。

 となれば、この村で栽培するのも一つの手じゃろうか。

 現状、この村はワシが来た頃よりも人が倍以上増えておるのじゃ。

 原因は言うまでも無く、少し前にあった奇病により村が壊滅し、ここの村人が助けたり、エドガー殿達が救助して、この村に行くように指示したりと様々じゃが、とにかく、倍以上に増えておる。

 当然、マンパワーが増えた事により畑も広がったのじゃ。

 これの一部をコボルト豆の栽培に当て、油を採取してエドガー殿の取引に利用させてもらうのじゃ。

 と言うか、コボルト豆は放置しても勝手に増えるので、他の畑を侵食しないように監視するのが本音なのじゃがな。

 これは村長も交えて計画を詰めるのじゃ。




 コボルト豆は余りにも成長速度が速い上、株が集まると凄まじい侵食速度を見せた為、現在の畑で栽培するのは不可能と言う事が分かったのじゃ。

 まさか4日で植えた畑を埋め尽くし、隣にあった道を超えて畑に侵食していくなど、流石に予想出来んのじゃ。

 なので、村長の提案として、新しく村に来ておった避難民に新しい村を作らせ、そこでコボルト豆を栽培させ、食糧などは此方の村で負担する、と言う荒業を実行する事になったのじゃ。

 形式上はこの村が少し広くなっただけ、という事で処理されるのじゃが、税はそれなりに増えるのは避けられぬのじゃ。

 まぁ、この事業が正式に稼働すれば、凄まじい利益を叩き出すのじゃから、大変なのは最初だけなのじゃが、これ、他の所が真似すると大変な事になりそうじゃのう……



 エドガー殿と村長で正式に契約を交わし、かなりの額が支払われる事になったのじゃ。

 それに伴い、油を搾る為の搾油装置をワシがいくつか村に作り、搾る作業は村におる家畜の力を借り、濾過はポーション製作でも使っておる濾過装置を使う事に決まったのじゃ。

 後は濾過を終えたコボルト豆油を保管する保管場所を作るのじゃが、こちらは村人達が総出で作る事になっておる。

 1から10までワシが用意するのは、流石に不味いからのう。



 しかし、ワイバーンの襲撃にオークの大移動、妙な奇病に、オークとオーガの交雑種……

 一つだけなら偶然で済ませられるじゃろうが、こうも立て続けじゃと意図的な物を感じるのう。

 一体何が起っとるんじゃ?



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