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「それじゃ、堂島が先に注文してくれるかな」
「は?」
俺と未白こころは、店内の出入り口付近で会話する。
彼女はにこにこしながら、ダッフルコートの腰をポンポンと叩く。
「わたし、カフェで注文したことないんだ。いつも友達がやってくれるから」
「俺だって、注文したことないよ。ちょっと注文の仕方を調べてみるか」
俺がスマホを操作しようとすると、彼女も画面を覗き込んでくる。
「「あ」」
そこで、未白こころと俺の声が重なった。
画面には、昨夜見ていた漫画の1ページが映っていた。ここで寝たんだっけ。
一番興味を引くところで眠ることを繰り返すと、自分の気持ちを制御しやすくなる気がして。
なぜか、未白こころはかーーーっと真っ赤になって、それでも無表情だけは崩さずに語りかけてくる。
「ど、堂島って子供だね。漫画見て、そういう気持ちになっちゃうんだ」
「は? お前はならないのかよ」
思わず動揺して、は? とか言ってしまった。
タブレットの反省ノートへの記述項目が増えた。
やはり、こいつといると平静を保てなくなる。
悟られないようにしないと。二人で無意味になるため。
「わたし、そういうの、調べたりもしないもん……。ハッキングされたら、どうするのさ……」
未白こころは、スマホを出して、フリックする。
「な、なにしてんだよ」
「さっきの漫画のタイトル、調べようと思って」
「な、なぜ」
「ちょ、ちょっと、えろい気持ちになっちゃったから」
「そういうこと言わない方がいいぞ」
「ううん。思ったことは、素直に言うよ。誤魔化したって、バレるんだ。だから、エッチな気持ちになった時は、その、なったよ……? って堂島に言うから……」
近くで飲食していたママさんたちが、「かわいいね?」「思い出すなー」と微笑ましそうに僕たちを見ている。
ちがう!
「未白こころ。俺たちは特別な人間だ。他人から、すごい、憧れる、と思われていたい。そのためには感情を捨てろ。さすれば苦しみはなくなる」
「う、うん、だね。すーはー、いこう」
キュッと突然、俺は手のひらを握られた。
俺はジト目で未白こころを見る。
「どうして手を繋いだ⁉︎」
「へっ? 安心すると思って」
「お子様か」
俺たちは「「はー」」とため息をついて、奥様方に温かく見守られながら、軽く注文の仕方を調べてレジに進む。
なぜ、この子も同じタイミングで嘆息したのかは、よくわからなかった。
そこで、ふいに後ろから声をかけられた。
――――――あとがき
「――お兄さま…………?」
(次回、ソロ行動のプロ、堂島の憧れの存在。サブヒロイン・妹の友達・黒松みやびがが出てきます――)
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