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「で。結局、わたしと堂島はカフェなる場所に来たわけだけど」
未白こころは、若干暑くなってきたのか、ダッフルコートを片手でバフバフしている。
ダッフルコートの中には、なんと半袖短パンのジャージを着ていた。
どんなコーディネートをしているのだ、この子?
わざわざ、帰る時のためにこっそりと着替えてきたのか。個性的だ。
カフェの駐車場には、四月なのにまだ雪が少し残っている。
ほんのり汗をかいた未白こころから、バニラアイスのような香りが漂ってきた。白ジャージごとバフバフするものだから、胸元の下着が丸見えで、ドキドキしてくる。
心の水面は、波紋一つ立たない状況が理想的だ。
けれども、未白こころと一緒にいると、波風立ちまくりである。
もともと、俺は焦りやすい性格だ。
だから、心の中に『無』を作り出そうとしている。
どんな時でも、慌てないために。
「なぜだろう。未白こころの隣にいると、動悸がするんだ」
「それは、ごめんね」
俺の心の水面に波紋が広がっていくが……、遠く、遠くへ……伸ばしていって、俺は言葉を続ける。
「当然、下着が見えた時はドキドキする。でも、それって最低なことじゃないか」
「……うみゅ?」
未白こころは、自分の胸元を見て、小難しそうな表情を作った。
俺は、顎に手を当てながら答えた。
「俺がこんな気持ちになっていると知ったら、下着を見られた女性は、恐怖で夜も眠れないだろう。そう考えると、俺はとても酷い人間だなと思う」
「頭の中で考えるだけなら、わたしも相当悪いことを考えているよ。お熱は上げないようにしているけれど。いたってふつうの声音で、死んでしまえ、と心の中で愚痴っている」
「もともと俺と未白こころは、意地悪な人間なのだろう。だから、罪悪感に耐えきれず、ゼロになろうとしている」
「ちがいない。……えーっと、その、堂島。男はエロいことしか考えていないと、わたしは知っているよ。だから、ほら、サービスだよ。サービスだって思えばいいんだ」
金髪金眼の美少女は、ニヤニヤしながら言葉を続ける。
「わたしは今、感情を制御することができた。どうだ、堂島。わたしの安っぽいスポブラは、ココアくらいの値打ちはある?」
「まあ、あるかもしれない」
「では、そういうことで。今日は一銭も払わないよ」
未白こころは、明らかに《快》の感情に振り切れていた。本当に面白い性格をしている。
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