105.回顧詐欺

「ねぇー、買ってよぉ。これ前さ、私がほしいって言ったやつじゃん」


「え、いつ……? そんなこと言ってたっけ?」


「えーとねぇ。たしかぁ……」


「あの時の約束、覚えてないとは言わせないよ」という言葉でありもしない記憶を捏造して人の善意につけこむ彼女にとって、情に厚いが物覚えが悪い男は絶好のカモってわけか。この様子だと「大きくなったら結婚しようねって言ったじゃん!」と婚姻届を突きつけてきそうな勢いだな、と一部始終を見ていた店員は思った。

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