第69話 落下
「――あれ? 見えなくなった……」
「隠すってのはこういう事か。脚を掛ければ見えるが……。『ワープゲート』のある場所についても探すのは面倒そうだな」
階段を下り振り向くと俺達が下ってきたはずの階段はその姿を隠した。
一段目のある辺りに足を掛ければそれは姿を現す。『ダンジョンクリエイター』というスキル1個で出来る事があまりにも多すぎるな。
「……今までこの階層の出入り口は私の作った『ワープゲート』だけなのかもって思ってたけど、探せば通常階層に繋がる階段もありそう」
「思えばこの階層の探索ってした事が無かったからな。ただ、呑気に探索出来る階層じゃなくなったのは痛いな」
さっき全て殺したはずのコボルトは既にリスポーンしていた。
だが、成長する時間が無かった為か、『ウォーコボルト』の存在は見られない。
「家に繋がる『ワープゲート』はもうない。コボルトは放っておいて移動を――」
「ぐおっ!?」
クロに新しく『ワープゲート』を催促しようとすると、リスポーンしたコボルトがいきなり大きく声を上げた。
不思議に思った俺はそのコボルトの場所まで移動すると、その身体を蹴り飛ばした。
すると、突然コボルトの身体は倒れながら姿を消した。
「ここにあるな。モンスターが湧いて出る様になったのはマイナスとしか思ってなかったが、まさかこんな形でプラスに働くなんて。そういえばさっき金色スライムをここに移動させた『ワープゲート』は……」
「多分だけど、みなみちゃんがランダムに金色スライムを他の階層に蔓延らせる為に短時間だけ生み出したんじゃないかな? あれを見るとね、みなみちゃんは私よりも『ワープゲート』のレベルが高いかも知れない。そうなれば私が生み出した『ワープゲート』はみなみちゃんに操作される可能性がありそうなの。だからこれはかなりラッキーだよ。行こう一也さん」
「ああ。だが念には念をだ。一旦『貸出』を解いてもらってもいいか?」
「あ、ごめんなさい。でも人間相手ならまた私に貸してね」
「その時は任せた。俺がモンスター担当、クロは人間担当。改めてサポート頼むな」
「担当……。へへ、なんかこうやって言ってもらえるとチーム、ううんコンビって感じでいいね」
「俺にはこそばゆい響きだ。それに共闘する仲間って意味なら佐藤さんを含めた3人。チームゲーマーの方がしっくりくる」
「……一也さん」
「慣れない事を言うとその、あれだな。ちょっと気恥ずかしいもんだな。話は終わりだ。さっさと先に進むぞ」
「ふふ、うん!」
俺は頭の後ろを掻くと、クロを先導する様に勢いよく階段を下り始める。
しかし……
「ちょ、おいおいおいこれは流石に誤算だぞ!」
「あ、脚が止まらなーいっ!!」
階段は下れば下る程急になり、俺達は半分落ちる様な体勢に変わった。
先に消えていったコボルトが何故戻ってこなかったのか、それをもう少し深く考えるべきだった。
「――光! クロ! もうすぐ出口だ! なんとか減速を!?」
「む、む、無理ぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいっ!!」
「お、おいっ!」
俺の忠告とは裏腹に更に加速するクロが俺の背中に突っ込んで来た。
体勢は完全に崩れ、俺達は倒れ込みながら光に体を突っ込む。
「――ん? なんだ?」
「さ、さ、最悪だ」
「う、受け止めてぇぇえええええ!!」
光を抜けて眼前に見えたのは、5人の探索者達と30階層の通常ボス、『トレント』。
かなり長さがあったとは思ったが、まさか繋がっていたのが、30階層の天井だったなんて。
クロは現状に気付き探索者に声を掛けているが、探索者達は慌てた様子でその場から離れる。
それほど俺達の落下スピードは速い。
何かこのスピードを殺せるもの……。そうだ!
「魔力弓、魔力消費80。魔力矢、魔力消費1。これで、止まってくれ!!」
俺は矢を放った時の反動に身を委ねる為に、トレントに弓を向けた。
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