21 親切をして仲良くなる作戦
綾小路と仲良くなろう!
──と言ったはいいものの、具体的には何をすれば女子同士って仲良くなるんだ?
前世の俺は、割とよく喋るクラスの女子もいたし、コミュ障を自称できるほどコミュニケーションに難がある性格ではなかった。しかし、こと恋愛面については積極的なほうではない。
つまり、女子と仲良くなろうと思って絡みに行った経験がないのだ。
綾小路の可憐な後ろ姿を、自席からじっと見つめていたら授業が終わりを告げた昼休み──今日こそ、亜矢瀬ではなく綾小路の女子グループに混ざって弁当を食べようと思ったのが、肝心の綾小路は普段の女子グループにはいなかった。
「あれ……? 綾小路は?」
すでに机をずらして四人席を作り上げていた女子たちに尋ねる。
「今日、日直だから、先に仕事やるんだって。真面目だよね〜」
グループの一人が答えてくれた──彼女の視線を辿ると、一生懸命黒板に書かれた板書を消す綾小路の姿が。
俺は綾小路に近づいて、不自然にならないように努めて明るく声をかけた。
「綾小路、昼飯食おうぜ」
「あ、早乙女さん……! お誘いは嬉しいのですが……」
ちらり、とまだ消し終わらない黒板を見やる綾小路。伊集院と言い、クソが付くほど真面目なメンツが揃っているな。
「どうしたんだよ? そんなの、食べてからでもできるだろ?」
「いえ、そうではなく……」
歯切れが悪い。俺は首を傾げて、綾小路が喋り出すのを待つ──綾小路は納得するまでこの場から離れないという俺の意思を汲み取ったのか、ゴニョゴニョと口を開いた。
「亜矢瀬さんが……」
「亜矢瀬?」
亜矢瀬が何か──と言いかけて気づく。黒板の右下、日直の欄には、『綾小路』『亜矢瀬』の文字。あいつも日直なのか。
「わたくしが日誌で、亜矢瀬さんが黒板消しという役割分担をしたのですが──昼休みになってすぐどこかへ行ってしまって、戻ってこないので……」
それで綾小路が代わりに黒板を掃除しているのか。こんな美少女に手間をかけさせるなんて、男の風上にも置けないやつだな。
亜矢瀬に憤慨した俺だったが──むしろこれはチャンスなのでは?
綾小路に親切にすれば、自然と仲が深まるのではないか。
そもそも、クラスメイト同士。親愛を深めたがっているのに拒絶する理由はどこにもない。
「俺、亜矢瀬探して日直やれって、殴ってくるよ」
「いえ、殴らなくても……!」
俺は綾小路に手を振って、廊下へと飛び出した。
亜矢瀬のいそうな場所なら、おおかた本人に教えてもらっている。俺以外の人間が探すよりも、効率よくできるだろう。
この時間帯、日当たりのいい人気のない場所は──
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