第20話 儀式魔法

「ニーナ、どうしたのじゃ?驚きすぎて、声も出ぬか?フハハッ!」


オババは俯きワナワナと体を震わせた。


「グレイス…。アンタかい。」


…思い出した。コイツは、魔女の谷の前長老グレイス。生け贄の儀式で若さを保っている超外道。…


「オババ様、コイツらは敵ッスか?」


いつもと変わらないのほほんとした声に反応したオババは、目を見開きながら顔を上げて、こちらを見るといつものように不敵に笑った。


「…ふっ、ヒャッヒャッ!あぁ!敵だよ!あの姿で200歳超えの超ババアからねぇ!敵以外であるわけないじゃないか。」


…よしッ!オババから許可がおりた。…


ホルダーから魔道書を出して構えると、グレイスはニヤニヤと口元に笑みを浮かべた。


「魔法職の童かえ。可愛いのう。だが、魔法では妾は傷つけることはできんぞえ。」


…確か、グレイスは魔女系上級職ーミスティックーで魔力特化型。通常なら魔法では倒せない。…


「ボスが先頭に立つなんて迂闊ッスよ。まあ、死んで後悔してろッス。―奥義―」


―奥義発動―

―深淵の光―


身体中から蒼白いオーラが吹き出し、右手で構えた魔道書に集束されていく。


魔女兵達がいる床一帯に複雑な魔法陣が展開されていく。


「サンダー、供物を出して。」


『御意に。』


後ろに控えていたブラックサンダーが一礼すると目の前に100体の盗賊の死体が現れた。


『シャー…』


…悲しそうな声出すなよ。…


「まだまだあるから心配しなくて大丈夫ッスよ。ブロッケン。」


『シャー♪』


儀式魔法

―デモンズ・ヘル・インフェルノ―


死体が魔法陣に吸収され、魔女兵達はドーム型の膜に覆われていく。


「フハハ。人間の死体を媒体としたマップ兵器型の儀式魔法かえ。童はダークマージ系中級職以上かのう?」


…流石、生け贄がライフワークの超外道。…


「おおッ!知ってるッスか?流石、日頃から生け贄の儀式してる人は違うッスね。じゃあ、これが避けられないのも分かってるッスよね。」


やがて、魔法陣から生み出された巨大な地獄の炎が渦を巻いて燃え盛り、魔女兵達に襲いかかる。


グレイスはニヤニヤした表情を崩さずに笑い声をあげる。


「フハハッ!バカな奴じゃッ!せっかくの儀式魔法を一人で行使するとはッ!小僧一人の魔力では、妾達を殺すことはおろかダメージを与えることもで…き…ん…


―「「「「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」」」」―


魔女兵達の断末魔が木霊する。


―「「「奥義が使えないッ…!?」」」―


中級職以上魔女兵達は防御系統の奥義を使って防ごうとするも、“深淵の光”の効果により無効化されていた。


「な、なん…じゃ…と…、防御力無視…に…奥義無効化…?あ、ありえん…。」


魔女兵達が悉く地獄の業火に焼かれてい様子をグレイスは唖然と眺めていた。


「おおッ!防御力無視と奥義無効の効果も分かったッスか?いやぁ、話が早いッス。無駄な抵抗はしないで大人しく死ぬッス。」


グレイスは表情を歪ませておぞましい顔になる。


「おのれぇッ!妾の魔女兵をよくもぉッ!」


…顔、怖ッ!…


「自分の心配をしたらどうッスか?」


怒りの形相のグレイスに、地獄の業火が襲いかかる。


「ほぇ…?うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

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