雨のハイヒール(月光)

カツン、カツン。

一歩一歩進むたびに背筋が伸びる。


ドレスを身に纏い、ハイヒールを履いて雨の中を歩く。

なぜか周りの景色が全部スローモーションに見えて、自分が少し大きくなった気がする。おめでたい日にも、やっぱりわたしの胃は痛いままなのに、それがわからなくなるほどどうしようもなく浮かれていた。


傘をささず、濡れてしまいたいような気持ちになるほど気が大きくなった。見事なほど幸せに感染した。


自分にも起こりうる出来事だとわかってはいるのに、現実のこととは思えなくて夢のような気がする。誰を呼ぼうか、みんなどんな顔をするのだろうか。同じように招かれた人たちがそんな話をしている。


わたしはそのどれもがうまく想像できなかった。いつも考えている幸せに、友人が1つの答えを見せてくれた。

だからだろうか。家に着いてしばらく経った今も、なんだかぼんやりしている。


そんな今日の1曲。

鬼束ちひろで『月光』


ついつい考え事をしているときに聴いてしまいます。

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