第19節 汚れ
アミ視点
薄暗い山道を進むと、今どこにいるかもわからなくなる。
明かりが1つもないし、どこへ進んでいるのかもわからない。
「なぁあ、ほんとにデロルはこんなところにいるのかよ」
猫に話しかけても、言葉が通じず返答はなかった。
この猫の考えていることもわからない。ただ進むしかなさそうでしんどい。
景色はずっと同じような薄暗さと木だけで、目的地に近づいているのかもわからない(決してうちが馬鹿だからってわけじゃないけども!)。
猫が立ち止まり「ニャー」、と鳴いた。
「どうしたんだ?」
猫より前に出て、猫の視線の先を見ると、
「お前だな」
ドレスを着た奴に向かって叫ぶ。デロルは振り返って笑った。
「おや、こんなところでどうしましたか」
「それはこっちのセリフだわ、ボケ。お前クレアに学校に火をつけるようそそのかしただろ」
「そんなとこまでご存知でしたか、確かに僕がクレアくんを利用してあなた達がいう、学校とやらに火をつけるよう仕向けました」意外と潔いいいな。言っていることクズだけど。
デロルは自信たっぷりな表情で笑っていた。
「なんでそんな顔できんの、人を騙したんだぞ、人の学校、建物を勝手に燃やしたんだぞ」
「確かに、人を騙すのも人様の家や建物を燃やすのは良くないことですね」
「ならなんで」
デロルは兵士より前に出て、うちに近づいてくる。
「それはあなた方が部族だからです」
「なんだそれ、意味わかんねぇんだけど。てか、うちら部族じゃねぇし」
「あなた達の格好や言葉がまさに部族です。アンダルシア王国にあるものではありませんよね」
「確かに、この世界にあるものではないけど、うちらは部族って奴じゃない。誰も傷つけてない。この村でみんなと楽しく暮らしてる」
「仲良く暮らしていれば、良いということではありません。この国にあってはいけないもなのです。あなた方みたいな汚れは」
デロルは続けて話す。
歩き方が怒りながら歩いてるみたいだ。
「あなた方は汚れなのです。この国における文化や歴史、思想をいつも汚す。長い歴史においてあなた方部族は、どれほどアンダルシア国民を騙し殺してきたのですか。それに比べたらこれくらい
「だから、うちらは部族じゃないんだって。子どもを騙して、人の建物を燃やすのが些細なことのわけないじゃん」
こいつと話して気づいたことがある。焦点がうちじゃなく、他の何かを見ている。さっきから目がちゃんと合わない。
「あなたは部族ですよ。あなたが学校を作ったのは部族の拠点をこの村に作るためであり、この村の住民達と仲良くするのは、仲間をいつでも率いられるようにするためですよね」
「は? 違う。もし、うちがあんたらがいう通り他のところから来たから部族っていうことだとしても、絶対にこの村を襲うためじゃない。セシルや他のみんなのために学校を作ったの」
「認めましたね。やはり、僕の見立て通りでしたか」
話が、言葉が違うわけじゃなく、話が通じないことに怖さを感じた。
「やっと認めたので良いことを教えてあげましょう。今村で火事が起きていますよね。あなたのお仲間は消火活動はしていますか?」
「当たり前じゃん。お前のせいで火事が起きたんだから」
「当たり前ですよね。そんな良いお友達さんはもし、学校とやらに子どもがいると聞いたら助けにいきますよね」
行かない、とは言い切れない。でも、子どもを巻き込んでまでうちらを苦しめようとする考えが許せなかった。
目だけが笑っていた。口は綺麗に閉じたままなのに目だけが笑っていて気持ち悪かった。
「お前ほんとに最低だな」
デロルに向かって走る。
──絶対にこいつはぶん殴る。
「たぶんそのお友達さんも今頃焼かれて死んでいると思いますので、あなたも死んでください」
デロルが手をかざす。魔法陣が展開されて、見えない何かがこっちに迫ってきていた。
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