第66話 それでも、やっぱり……
「ずっと女子校で――」
ひと息付いたジェシ―ことジェシカさんは今回一連の『シチュエ―ション・ト―ク』を開催した理由を説明してくれた。
しかし…説明中も『高1』のジェシ―としてで、まったく油断できない可愛さを維持していた。そして迂闊にも『ジェシカさん』なんて呼ぼうものなら――
「コクっといてそれなんだ? へ―ふ―ん。そうそう、今まで散々ノロケられたから『シル』にさっそく愚痴でも送ろっと」
マジでシルさんにラインを送ろうとするので、全力で止めた。シルさんにバレたくないではなく、シルさんは『シチュエ―ション・ト―ク』とまったく知らないはず。
混乱させるだけだし、誤解を解く役目はオレになりそうなので。
「大学も女子校なんですか?」
「大学は共学。でも、飛び級だったし…すぐ卒業しちゃった。君、いま見えないって思ったでしょ? そこそこ賢いんだからね?」
いや、飛び級ですと! そこそこじゃねぇだろ? 普通に賢く見えるし……ん? 飛び級? ん? ジェシカさんって実際何歳だ?
見た目というより、大学出て2、3年かな? 位の感覚だったので20代中頃、浅倉さんくらいかと思ってた。
「ジェ、ジェシ―は実際何歳?」
「実際ってなによ、失礼ね。君と同じ――今年16になるの。って流石に無理あるね、19になるの。そんなに年上じゃないでしょ? でもね。飛び級とか女子校だったから恋愛経験がなくって」
「それで『シチュエ―ション・ト―ク』なんですか?」
「うん…そのつもりだったんだけど…最近お嬢様が目について『めんどくさくて』ここ何日かの間で何回退職届だしたやら――」
「えっ、退職届……じゃあジェシ―ホントに?」
「あれあれ? 君ったら私がいなくなったら寂しいわけ?」
「あ…うん。そりゃ…」
「あっ…そのごめん。ちょっと今のは…ごめん。どうしょ、なんかわからないね『シチュエ―ション・ト―ク』してると。まったく嘘でもないし、私だって順ちゃんと別れたくないとか思ってる…」
「お嬢様面倒くさいけど我慢したら、順ちゃんに会えるしとか。演技なのにヘンテコな気持ち。しかも、なんか普通に同じ年とか思ってる…セルフ洗脳ね、ほんと……最近…凹むんだぁ…順ちゃん、お嬢様のナイトになるのかなぁ、もしそうだったらナイトと結婚する確率バカ高いし……はぁ…変でしょ?」
「恋愛経験ないから始めたはずなのに…普通に恋してるみたい。しかも16としてよ」
「ジェシ―。あのナイトとの結婚率バカ高いって…100パ―じゃないよね」
「あっ、うん。そうじゃないけど。苦楽を共にするとね…あと」
「あと…?」
「複雑なんだ。実際、私と君。別に住む世界が、違うってつもりじゃないけど。やっぱり違うの。私たちに関わるってことは、日本では普通に手に入る安全とかないかな。ラ―スロ公国が危ないってわけじゃなくて、ナイトって」
「――特にお嬢様のナイトは赴任先が……だから断ってほしい、かな…」
「でも、ジェシ―やシルさんに関わる為って、変かもだけど。日本の高校生じゃ無理あるでしょ」
「うん。ごめん。それはそう。私達は何だかんだって、機密の塊だから。今はまだお嬢様は要職についてないから
「でも就任式後は『こちら側』の人としか……でも、寂しいからって順ちゃん危ないの嫌だし…これだって『シチュエ―ション・ト―ク』のせいでこんな気持ちなだけかもだし、いつ覚めるかわかんないし――だから」
「断ってほしいの?」
「う、うん…」
「会えなくても?」
「うん…そう…」
「電話も、メ―ルも無理なんでしょう?」
「うん…無理かな。少なくとも会話は監視される」
「監視される……それは例えば『同じ側』になっても?」
「えっと、それはない。それはダメだから。あっ…ごめん。なんだろ…冷静な判断が、今できないなぁ…『シチュエ―ション・ト―ク』だけのせいって決めつけるのも」
「なんかわかんない。本音はね、うん。一緒がいいなぁ、楽しいなぁ…なんだけど、現実は――だからよく考えてほしいなぁ。それでも――」
「それでも?」
「うん、さっきの『地球の裏側でも』って、あれ……よかったよ? すごく。そういうの……わかんないけど、一生言われないで終わってたかも。うん…だからね、順ちゃんが『どちら側』選んで私は私で出来ること探す」
「うん」
「へへっ…変でしょ? 女子みたいでしょ?」
「うん。女子みたい」
「ひっどいなぁ〜〜ちょっとは否定しろっての! もう! 明日だよね」
「そう、明日だ」
「じゃあ、そろそろ帰ってお互い準備しようか! なんてたって決戦前日なんでしよ? 頑張んないとね!」
ジェシカさんはベンチに腰掛けたまま、胸をぐっと反らして伸びた。オレは何となくそれを見ていたら、ジェシカさんは少し顔を赤らめて、胸元を整えた。
いや、胸見てたわけじゃないですから……それでも照れたジェシカさんの顔を見れたからこの誤解はアリかも知れない。
ジェシカさんの言った通り、オレは明日それなりの決着をつける。その前日にデ―トしたのが、ジェシカさんというのは、うん。オレにとっては意外だった。そんなオレの思いを知ってか知らずかジェシカさんはベンチから立ち上がりオレの隣に並んで、顔を覗き込んだ。
「これ…ね?」
ジェシカさんは珍しく緊張した面持ちだった。
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