第23話 そして日常へ。
総理官邸。
沈黙を保っていたラ―スロ公国。しかし、ここに来て通告なしに国営放送より発信された『皇女殿下襲撃事件』の記者会見が総理官邸を震え上がらせた。
ラ―スロ公国は、次世代AI産業の覇権を左右するであろうレアメタル通称『
立体式半導体『クロス・キュ―ブ』――AIの高度な処理を高速かつ、省力、小型を実現するために、本来平面設計の半導体を立体式化することにより可能となる技術。しかし、半導体の立体化にはレアメタル『
敢えて言うなら中国を中心とする、
――とは言え
現状『
逆に日本がギリギリ先進国の仲間で居られるのは、親日国であるラ―スロ公国から輸出される潤沢な『
しかしながら、立体式半導体『クロス・キュ―ブ』の製造では他国を数歩リ―ドする日本だったが、残念ながらAI技術では相当な遅れを取っており、その為今回の『モザイク・ミスト』解析作業が進まなかった。
つまり高度な立体式半導体『クロス・キュ―ブ』を生産所持出来ても、搭載されるAIのスペックがいまいちなら、結果は推して知るべしなのだ。
それはさておき、総理官邸はハチの巣をつついた状態に陥っていた。
レアメタル『
明日の早朝政府専用機で、官房長官をラ―スロ公国へ飛ばし、文部科学大臣を斎藤順一が通っていた私立
そして時の総理総裁
「総理、先程から斎藤家に連絡を取っているのですが……」
「そうか……引き続き斎藤兄妹と連絡を取ってくれ。必要なら足を運んででも『こちら側』に引き込みたい。連絡がつき次第、明日早朝にでも兄妹と会う手配をねじ込め。報道関係の根回ししてくれ。それで午後からの野党突き上げを
時の総理総裁
(たかが中高生の兄妹、苦労話のひとつ、ふたつ聞いてやって頭でも撫でてやればこっちのものだ。この兄妹を押さえれば『ラ―スロ公国』も強くは出られんだろう……お気に入りのようだしな)
しかしながら、時の総理総裁
「わぉ……これがウワサに聞く『スキヤキ・パ―ティ―』デスか!?」
斎藤家はスキヤキ・パ―ティ―真っただ中だった!!
□□□□
「お兄ぃ――どうしよ。お肉おいしい。動画視聴爆上げ! あっ、コメント返さなきゃ……」
「マイちゃん、食べるか、しゃべるか、動画見るか、コメント返すか、絞ったら? ほら、またごはんこぼして……」
「わぉ……ジュンイチさん、舞美ちゃんにめっちゃ優しいデス! ジェラシ―です! 私も負けずに舞美ちゃんに優しくシマス!」
「うわっ! なに!? ふたりして顔拭かないで!! いや、そこまでごはんこぼしてないからね、私!! ん!!! お兄ぃ!! おまっ、なんで拭いた!? かわいい妹の、愛して止まないはずの妹の顔、今なにで拭いた!? 言ってみ?」
「なにって……そこにあったハンドタオル?」
「ハンドタオルちゃうわ!! 完全におふきんだ!! しかも、さっき陽気なヒゲ親父がビ―ルこぼして、国産麦芽たっぷり吸った
「わぉ…ジュンイチさん! ダメですよ? たばことお酒は二十歳からデス!!」
「シルちゃん!? 一国のお姫さまに大変申し訳ないですが、ここは敢えて言う!! おまっ、その手に持ってるモンで『仮にも義理の妹になるかも』な私の顔拭いたよね!? しかも口元を中心に!!」
「わぉ…どうしましょ…ジュンイチさん。痛々しいまでにブラコンの舞美ちゃんが私の義理の妹になってくれるナンて…」
「いや、痛々しくないから。日本じゃ割かし目にするレベルだからね? だよね? お兄ぃ? たまにお布団に潜りこむなんて普通だよね? 流石にお風呂ははいんないよ? お兄ぃがお風呂入ってるとき、お兄ぃが『のぼせるくらい』脱衣所うろつくぐらいで」
「斎藤政策担当次官候補見習い」
「はい、ジェシカさん……その…行き過ぎですか?」
するとジェシカさんは軽く咳ばらいし、舞美ににじり寄る。まさかの鉄拳制裁か!?
「斎藤政策担当次官候補見習い! 共にブラコン道を極めよう!!」
呆気にとられるオレにシルさんは解説を担当してくれた。
「ジェシカは生粋のブラコンです! 執務室にはお兄さんの写真で溢れてマス!」
そう教えてくれるのはいいが、シルさんの手に握られてる丸っこい布――確か今しがた舞美の口元を拭いたはずの布地。
オレの記憶が正しいなら……父さんが一日家族のために労働に勤しんでくれた時に履いてた靴下のはず……そしてさっき舞美の口元を…!?
舞美はがその事実に気付くのに1分の時間を要した。
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